団子をすっかり堪能し、二人は身を寄せ合ったまま眼下に広がる菜の花畑を目に映していた。

穏やかな陽気。
吹く風は暖かで、人の気配は無く、辺りには美しい景色。
極楽浄土とはこの様な所だろうかと、穏やかな眠気で思考の鈍くなった頭で山崎は思った。

とん、と山崎の方にナマエの頭が乗せられた。
重みも掛けて完全に身を預けている。
彼女がこうして甘えてくる事はとても珍しく、眠気に包まれながらも、山崎の腹の中で突如として形容し難い強い熱が疼いた。

いや、本当は熱が生じる下地は出来ていたのだ。
春という万物が浮き足立つ季節然り、悪戯童子の様に山崎に間を与えないナマエの挙動然り。

自分の肩に頭を預けて目を閉じているナマエを見ると、そこから先は勝手に身体が動いた。

首を伸ばして、ナマエの額に口付ける。
特に驚きもせずにゆっくりと目を開き、頭を擡げて柔らかい眼差しを向けてくる彼女と少しの間視線を交える。

その目は一見優しげであるが、何処か好戦的で、山崎が次に何をしてくるかを読んでいる様な所があった。
何となく面白く無い気持ちになり、山崎はナマエの後頭部に手を回し、今度こそ逃げられない様に強い力で引き寄せ、己の唇を彼女へ押し当てた。

漸く満足の行く接吻が叶った。
ナマエが拒絶や抵抗をしない事に強い喜びと強烈な欲求を感じ、何度も繰り返して口付けを求める。
ナマエは絡み付くような手使いで山崎の背に腕を回し、その口付けに能動的に応じた。

その仕草が山崎の感情を煽り立てた。
ナマエの両肩をしっかり掴むと唇を求めるのを止め、滑る様に耳朶へ移り、軽く歯を立てる。
乱れた吐息と共に、ぴくり、とナマエの身体が跳ねた。

動きはまだ止まらない。
そのまま下方へ行くと、頬、首筋、少し襟を退けて鎖骨へと口付けていった。

ナマエは山崎の唇が触れる度に身体を小さく跳ね上げて、次第に呼吸を荒らげた。
背に回した手で彼の頭を抱き、快感に震える手でくしゃりと山崎の髪を掴んだ。

鎖骨に口付けた所で山崎が顔を上げる。
もう一度ナマエと視線を合わせると、彼女の目は潤み、切なげに揺れていた。
その目が、これでは足りない、と言っていた。


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