十九
何度も何度も、繰り返されるキス。
求めて与えて奪い取って、それでもまだまだ足りない。
薄く開けた口から遠慮がちに滑り込んできた舌に、自分のそれを絡ませて互いの熱を共有する。
斎藤君の後頭部に添えた手で髪をくしゃりと柔らかく掴むと、彼は手の平と指を使って服の上から私の身体のラインをゆっくりなぞった。
明るくて少し恥ずかしい。
時々聞こえる音が何とも言えず淫らで、恥ずかしさから逃げようと私は目を閉じていた。
感情が酷く昴ぶる。
不意に唇が離れて物寂しく思うと、すぐに耳元に熱い吐息を感じた。
『っ、』
耳朶を舌先で舐められたのが分かった。
くすぐったくて肩を少し跳ね上げる。
何度かそうされた後、唇に触れる感触を楽しむかのように耳朶を咥えられ始めた。
くすぐったさの中にそれだけではない感覚があって、私は身を捩って逃げようとした。
だけど斎藤君の手が私の頭をしっかり抱え込んで、決してそれを許そうとはしなかった。
我慢して潜めていた息が荒くなり、身をくねらせて抵抗していた気持ちも薄れてきた時、斎藤君が耳元に歯を立てた。
『やっ、』
そこからまるで甘い電流が走ったかのようで、私は思わず声を上げてしまった。
斎藤君はどうやら耳フェチのようで、私は耳が弱いらしく、相性はある意味バッチリだった。
ゆっくり下っていた身体をなぞる手がそっと窺うように胸へと触れてきて、形に合わせて手の平で柔らかく包む。
その先の刺激を思うと期待感で胸が疼く。
すると、あろう事か彼はそれをぱっと止めて身体を起こしてしまった。
『…えっ?』
まさか、此処まできて今更お預け?
目を開けて斎藤君を見た私の顔は、相当びっくりした顔をしていたらしく、彼は私を見て素に戻って笑った。
『…ベッドへ。リビングでそのまま、は嫌なのだろう?』
あ、そういう事か。
先程買い物していた時に交わした会話を覚えていてくれてたのだ。
『…うん』
合点がいってふにゃっとした笑みを返すと、斎藤君は突然私を軽々と抱き上げた。
慌てて彼の首に抱き付くと、すたすたと歩いてベッドまで運ばれた。
私を下ろした後、素早くリビングの全てのスイッチをオフにして斎藤君が戻ってきた。
『仕切り直し?』
冗談めかして私が尋ねる。
『…そうだな』
斎藤君が笑いながら答える。
私が両腕を広げて迎え入れる格好をすると、斎藤君は静かに胸へ飛び込んできた。
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