二十二

それぞれの家族が揃い、歓待の宴が始まった。
内輪のみのその席は盛大ではなかったが、とても居心地が良く遠慮も何も要らない、心の底から楽しめる席であった。

不知火は何かとナマエの事を自慢したがり、ミョウジはにこやかにその話に耳を傾けたが、散々聞かされ続けた風間はうんざりした様子であった。
自慢された当の本人はというと、皆の手前夫をはたく訳にもゆかず、顔を赤くしてただただ上目遣いに睨み上げていた。

子達の瞼が重そうになってきた所で宴会はお開きとなった。
男鬼達は早めの時間から酒を呑んでいたので酒量は足りていたし、女鬼達はどちらも腹に子がいる。

日付が変わる前にお開きとなる事はこの里では大変珍しく、屋敷勤めの鬼達は皆、もう終わりで良いのか、という雰囲気を漂わせていた。

『あー、食った食った呑んだ呑んだ!
今日は気持ち良く寝られる気がするぜ』

寝所の準備が出来たという知らせを受けて不知火が立ち上がり、腹を擦りながら満足げに言った。
それを見た風間は半ば飽きれたように呟いた。

『ふん。貴様のような大食らいに長居されては下働き達が疲弊して敵わん。
…一体いつまで逗留するつもりだ』

一々嫌味な奴だな、と返してから、不知火は顎に手をやり、悩む素振りを見せた。

『んー』

悩みながらナマエを見る。
目が合ったナマエは少しだけ眉を持ち上げた。

『あと二三日って所か。
こいつの疲れが癒えた頃を見計らってあっちに戻るつもりだ。
…早くうちの奴等にもガキの事知らせてやりてぇしな』

そう言って不知火はナマエの頬を指の背で一撫でした。
その仕草から妻の事が大切で仕方がないといった様子が窺えて、ミョウジは不意に幸福感を覚えて胸が温かくなった。

自分が大事に思っている者が幸せそうにしているのを見ると、こちらまで温かな気持ちになる。
そういった目でミョウジが彼等を見ていると、気付いたナマエが我に返り、慌てて夫から目を逸らした。

『帰りはどの様にして戻るつもりだ』

『そうだな、また長い事馬に乗せる訳にはいかねえから…。
…俺が抱えて帰るか。
馬で帰るよりだいぶ早ぇし、負担も少なくて済むだろ』

ナマエを腕に、息子を背にして帰るのだと不知火は言う。
確かに来た時と同じ方法を辿るよりその方が幾分良いのかもしれないが、普通は中々思い付かないだろう。
抱えて帰るとは何とも豪快で、彼らしい案であるなとミョウジは思った。

『かっ、抱えてって…!』

若干の抵抗があるらしく、ナマエは恥ずかしげに唇を震わせていた。
彼女が恥じらいを覚える理由が解らないようで、不知火は顔が真っ赤なナマエに首を傾げた。


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