十二

女主人の話というのは、近ごろ京が物騒になってきたから気をつけろ、というものだった。

『中でも特に気をつけなあかんのは“新選組”ゆう集まりなんよ』

『しんせんぐみ?』

そう、と言って女主人は言葉を続ける。
京の治安を守るために“巡察”だと言って、徒党を組んで町中を練り歩いていること、
影で“人斬り集団”と呼ばれていることを教えてくれた。

『浅葱でだんだら模様の羽織を羽織ってるからすぐわかるはずや。
…って言ってるそばから、ほら』

憎々しげに通りの向こうに目をやる彼女に倣って、ナマエは同じ方を見やった。

蜘蛛の子を散らす様に人波が左右に分かれていき、鮮やかな浅葱の集団が列を成して現れた。
ただならぬ気配を放ちながら歩いて行く彼らは、普通の人間とは何か違うのだろう。
中でも先頭を行く白の襟巻きをしている、青黒の髪の青年から特別強い気配を感じた。

『!』

ナマエの視線に気がついて、青年がこちらを向いた。
驚いて目を見開くと、彼はすぐに視線を外した。

見られることは彼らにとって日常茶飯事なのだろう。
その目の奥にある真意を瞬間的に探っている様にナマエには感じられた。



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