変になっていく心 4 | ナノ


※ある意味獣姦ですので、苦手な方は注意。




「こんな時間に叫んで、…どうかしたの?」

「ええっ、あ、いや、その!」

 目許を擦りながら起き上がる雪男の姿に、一瞬燐は全ての思考が停止する。全身が冷えていく感覚に瞳は泳ぎ、意味もなく両手を動かしてぶんぶんと首を左右に振る。
それを見るだけで何か隠し事をしていると一目瞭然なのだが、幸いな事に雪男も寝起きで思考が鈍い。更に眼鏡も掛けていないのでぼんやりと燐の姿が見えるだけだった。

「今何時だかわかってる?明日も早いんだから寝ないとまた授業中に居眠りするよ。…もしかして、何か嫌な夢でもみた?」

「…え、あ、そう!そうだ、悪いな、嫌な夢見ちまって!」

 雪男は寝起きで不機嫌なのか刺々しい口調ながらも語尾は柔らかい、そこには燐への気遣いや心配さが含まれている。それがふわりと温かな感覚として燐の心を覆い、先程まで混乱がゆっくりと落ち着いていく。心に余裕が出来れば燐は次にメフィストを探そうと視線を動かしてみる。しかし一向に見付からない、どうやら既に掛け布団の中に隠れたらしい。

「…そう。だとしても早く寝ないと駄目だよ」

「おう、わかってるって。お前も、っ」

 安堵した瞬間、ぬるりと感触が燐の腹部を這う。びくりと肩を震わせて瞳を向けると布団の膨らみが見え、ぬるりとした感触がメフィストの舌だと理解する事が出来た。
 その証拠に腹部にはふさふさとした毛先も当たっていて、微妙に擽ったいのだ。けれど、燐は戸惑う。メフィストは何をしているのだろう、今は雪男に怪しまれないようにじっとしているか逃げるべきだ。

「兄さん?」

「あっ、いや、俺を気にせずお前も寝ろよって」

「うん、そうだね。明日も早いし」

 相槌を打つと雪男は起き上がった上体を再び寝かせてベッドへ戻っていく。ほっと吐息を吐き出して燐も寝転べば、メフィストを部屋から追い出す事にしようと掛け布団を掴む。けれど、ぬるりとした感覚が腹部から更に下へ下へと向かっていく。

「…っ、」

 股の間へ小さい犬の身体が収まればぴたりと動きを止めた。そして器用にメフィストの前足がジャージの間に挟み引き下げられ、ずるりと引き出されたのは他人に触れられた事さえない性器。吐息が掠めるだけでまだ幼く肉付きの柔らかい脚がぴくりと跳ねる。
 燐は性の経験はなくとも知識がない訳ではない、嫌な予感からか無意識に逃げなければと身を捩る。

「そういえば兄さん、」

「っ、な、何だ?」

 しかし、まだ雪男が起きているのならば、と大袈裟に動く事を躊躇い足裏がシーツを蹴るだけで終わってしまった。それを知ってか、メフィストはまだ萎びた性器の先端をぺろりと舐める。びくっと体が跳ね、熱い息が唇から漏れる。それでもどうにか平静になるよう努めるも語尾は僅かに震えていた。

「いや、そういえばさっきフェレス卿の名前を呼んでなかった?」

 どくりと心臓が大きく脈打つ、何か言わなければと唇だけが開閉を続けていた。けれど、続けてメフィストの舌が裏筋から上へ舐め上げられその思考が腰からくる段々と沸き上がる甘い痺れに妨害されしまうのだ。
 止めさせなくてはと、どうにか震える内腿でメフィストを押し退けようとするも、動くなとばかりに犬歯が既に熱を持ち膨らみを増した性器を滑る。

「ひ、…ぅっ」

「聞いてる?兄さん?」

 反射的に漏れた悲鳴を殺そうと顔を横へ逸らして枕に顔を埋めた、しかし雪男の問い掛けに答える余裕は殆どない。燐も年頃なのだが知識はあるだけだ、触れられるましてや舐められた事なんてある筈もないのだ。だからなのだろうか、熱い舌が裏筋を這って亀頭を戯れのように舌腹でぐりと押し付けられるだけで酷く気持ちいい。

「っ、…ぅ、」

 無意識にメフィストの舐めやすいよう、閉じた太股を僅かに開いていき腰をベッドから浮かす。そしてメフィストはそれに応えるようざらりと舌がねっとりと往復する度にピチャリと卑猥な水音が響いていく、それが雪男に聞こえてしまうのではと、燐の背筋は震えた。

「…もう寝たの?」

 雪男の問い掛けに応える事も出来ず下半身からぐすぐずと溶ける甘い熱を口に出さないように燐は必死になっていた。足指は丸まり、長い尻尾の先までふるふると震えている。
 快楽に呼応する様に明確な質量と硬度を増した性器に掠める、メフィストの犬歯だろう。それが掠めるだけでも悦くて、熱い吐息以上のものが漏れそうで枕だけでは足りず掌で慌てて塞いだ。

「……」

 どの位だろう、暫くして雪男から規則正しい寝息が静かな室内に響き始めた。その頃には燐の張り詰めた熱は解放を望み、蕩けた脳はここに至る意図さえも忘却して、ただ解放だけを望み舌の動きに合わせて腰を揺する。頬は既に赤く色付いて、額からじわりと汗が滲んできていた。潤みを帯びた双眸は、焦点はなく天井を見るだけ。

「…メフィ、…出ちまう、っ、から……精液、出ちまう、……離し、っ」

 掠れた小声で絶え絶えに懇願するもメフィストは、器用に鋭い犬歯を使いぐっと亀頭の鈴口へ埋めるよう引っ掻く。そうすれば押さえ方の知らない燐は呆気なく熱い白濁の液を吐き出した、両掌で必死に口を塞ぎ、がくがくと脚は震え暫くしては身体の力はがくりと抜け、四肢をベッドに投げ出した。

 解放感からだろうか、瞼は重く白く霞むような思考の中。メフィストの存在が気になり、瞳だけ動かすと燐に長い影が掛かっている。まさかと顔をゆっくりと上げれば何時もの胡散臭い笑みと、道化師のような出で立ちのメフィストが燐を見下ろしていた。

 その口許にはどろりとした白い液、それが燐自身のものだと理解するとカッと羞恥から身体全体が熱くなる。

「……そこまで言うのでしたら、今から正しい飼い慣らし方でも教えて差し上げましょう」

 ぺろりと口許につく精液を舐め拭うと淡々とした落ち着いた声、整った微笑。けれどその瞳は冷たく、けれど色の欲の熱が激しく宿る。例えるならば蒼白い炎。
元来悪魔というのはこういうモノではないか、と脳内で高鳴る警戒音と共にまるで他人事のように燐は考えていたのだった。

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