小説 | ナノ


▼ 続.ランデブー


熱っぽい吐息が、ほの暗い寝室に篭る。
たまに混ざる声ともつかない声と ずると粘膜が擦れ合う音。
下肢に走る温かい刺激に 中条がくと眉をしかめた。

酔っているのはどっちだ。

数十分前。
ガサゴソと衣服が剥がれる気配に目を覚ました中条が見たものは、部屋着姿の美柴だった。
家まで帰ってきた記憶はあった。だからそこに美柴がいるのはなんら不思議ではない。
が、しかし。

「…ッ!?」
この展開は普通じゃない。
ベッドに横たわった自分の脚の上に、美柴が跨っているのだ。
しかも、美柴は涼しい顔でこちらのパンツと下着をずり下ろし、急所を持っている。
今にも そのまだ萎えている性器を口に含みそうな気配。
「な!?」
夢にしてはリアルすぎる感触と光景。中条は驚きを隠さず、バッと身体を起こした。
そしてまた一つ異変に気づく。思わず、自分の両手を凝視してしまった。

「……おいおい…これはどうゆう事だ?」

脱いだ覚えはない。おそらく目の前の奴によって上半身は裸にされていた。
そうして着ていたシャツで、両手首がしっかりと胸の前で縛られていた。
「……。」
中条が目覚めたことに気がついた美柴は、下肢に埋めようとしていた顔を上げた。
その動作に焦りはない。
それよりか、何故か少し勝ち誇ったような表情を見せる。
「……飲みすぎた自分が、悪いんだ」
「…お仕置きにしてはタチが悪いんじゃねーの?」
「だからお仕置きになるんだ」
しれっと言い、美柴は中条の身体の上を這い上ってきた。
起きている上半身を突き飛ばし、無理やり中条を押し倒す。
ボスンとシーツに沈む背中。中条は抗わず じっと美柴を見つめる。
覆い被さる美柴もその視線から目を反らさず、顔を寄せる。
間近に迫ったその瞳には、獲物を喰らおうとする妖しい輝きが見えた。

「………………」
中条は内心 こんな今までにない状況に焦りがあった。けれどそれを悟られぬように いつものように薄く笑ってみせる。

「お前にこうゆう趣味があったとはな。驚きだ」
「……そんな事言っていられるのは、今だけだ」

羽根で撫でるように 美柴の指先が露な性器に触れた。
ヒクリと思わず肩が反応してしまう。それを見た美柴が、微かに口角を上げた。
中条を試すように見つめたまま 熱を柔く握った手を上下に扱う。
「…ッ」
刺激自体は大したことはない。けれど、その淫靡な笑みに、撃ち抜かれていた。
言い様のない興奮を覚える。
(……俺も相当酔いが回ってるな)
シラフなら、こんな受け身の状態は一瞬で逆転していたのだが。
勃ち上がり始めた熱を弄んで、美柴は中条の耳朶を弱く噛む。
耳郭を舐める舌の感触に ゾクゾクする。この舌が 次に自分の何処を沿うのか。考えるだけで 下腹が疼いた。

「……ッ…」
「まだ、触ってるだけだ」
小さな美柴の声は、甘い感情を煽る。
美柴でもこんなにいやらしく喋ることがあるのかと 感心してしまった。
「…〜お前…何してるか分かってるのか?」
「分かってる。そっちこそ、これからどうなるのか分かってるのか」
「…………良い顔しやがって…」
囁く美柴の目元に熱が篭っている。その些細な表情で 中条は自分よりも美柴のほうが興奮していると気づいた。
おそらく、誰一人として見たことのない 欲に駆られた美柴鴇。
もっともっとそんな表情を見てみたいと思った。
そもそも、美柴が自分からこんな事を始めるなんて、反則だ。

中条は 縛られた両手を掲げ、優しく美柴の頬に触れた。
すこし動かしてみて分かった。このシャツの縛りは抜こうと思えば抜ける加減がしてある。痛めつけるのが目的ではない。
「……お前、明日絶対後悔し」
言い終わらないうちに 唇を塞がれた。頬を撫でていた指を捉えられ、両手首ごと頭上にまとめ上げられる。
「っ!」
少し身じろいだ中条を、美柴は 体重をかけてシーツに押し付ける。
深く深く口内を舌で探った。中条も負けず それを拾う。
互いに噛みつき合う唇の間で、煙草の苦味とアルコールの香りが行き交う。
頭上に押さえつけられた手首を軽く捻り、中条は美柴の手を握った。
はあと唇を解放した美柴が、真上から中条を見据える。
静かに燃え滾る、マグマのようにギラついた視線。

「寝かせない。」

美柴の挑む声色に、中条は挑発的な笑みで応えた。




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