▼ 続.ランデブー
中条を肩に背負ったのは、何年ぶりだろう。
ビズをしていた頃には………
……なんて思い出す感慨は全くなかった。
重くて途中で放り捨ててやろうかと思った。
寝入っている優希を運ぶのならば慣れているが、中条のように自分より体格のある人間なんて、まるで砂を詰めた袋のようだった。
しかも寝惚けているのか、何度もフラフラと右往左往するから なかなか前に進めなかった。
「っ真っ直ぐ歩け」
「〜…あー…?」
「…………。」
殴ってやりたくてたまらない。
なんとか寝室のベッドに中条を転がした。
枕に頬を埋めた中条は、そのまま本格的に眠ってしまった。
ようやく降りた重荷に はぁと息を吐いて、美柴は腰に手を当てる。
こんな夜更けに重労働だった。
最後に 毛布を掛けてやろうと腕を伸ばしたところで、中条が仰向けに寝返った。
「…………」
そろりと近づき 見下ろしてみると、中条は実に気持ちよさそうに眠っていた。
こんなにじっくりと寝顔を見たことなんて、今まで無かったように思う。
酔っているせいか 心なしか目元が赤く、それがなんとも扇情的に見えた。
「…………」
一瞬躊躇った。けれど、掛けようと持っていた毛布は するりと手から落ちた。
ゆっくりと中条を跨ぐように、ベッドに乗る。
そうして、そっと中条の上に重なって くちづけてみる。アルコールの匂いが一層濃く感じられた。
「…っ」
いやに高ぶっている自分に気がついて、美柴は 落ち着けと一度身体を起こす。
普段、自分から誘うようなマネはあまりしない。ましてや寝ている相手にこんな風に手を出すなんて、考えたこともない。
でももう一度、無防備な中条の寝顔を 上からじっと見つめる。
奪いたい。
自分にも雄らしい欲望があったのだと、今知った。
「……………あんたが悪い。」
ギシリと軋むベッドのスプリングに、やけに鼓動が高鳴った。
「………………。」
こんなところ、見られたくない。
喉が苦しくなるほどの、この欲情。自分一人では治められそうにない。
もし中条が目を覚ましたらどうしようか。意地悪くからかわれるに決まってる。
でも………そんな迷いは 薄れていく。
どうしても、今、この男が欲しいのだ。
美柴の爪が、カリと中条のシャツのボタンを引っ掻く。
欲に浮かされた瞳は、じっと強く獲物を見つめる。
二日酔いで覚えていなくたって構わない。
覚えていたって 酒に溺れて好きにされたくせにと言ってやろう。
「あんただから、こうなるんだ」
思い知れ、この感情を。
緊張を解すように舌で濡らした美柴の唇は、中条の耳郭に触れて、首筋に落ちた。
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