小説 | ナノ


▼ あなたのためならどこまでも5

■続・中村明日美子著「あなたのためならどこまでも」パロ。結婚詐欺師中条×刑事美柴。



「逃げたのは、お前のほうだろ」
そう言って、中条伸人は俺の前から姿を消した。

俺はというと、連行中だった容疑者を逃がしたという失態ゆえに減棒30%三ヶ月。
そして、相変わらずの日々に戻りつつある。



「美柴、交代だ」
とあるターゲットに張り込みをしている車の助手席に、先輩刑事が身体を滑り込ませる。
「なんか動きあったか?…ねぇーか、ねぇーよな」
自分で答えを言ってしまう先輩刑事は、うんざりとした様子でシートに背中を沈めた。
ここ三日の張り込みに これといった成果はなく、二人の刑事は少々疲弊気味だ。
「…………。」
先輩刑事と同じく疲れた様子の美柴は、小さく相槌を返して あくびを噛み殺す。
眠い。腹が減った。
「……コンビニ行きます。何か要りますか」
ドアを開けて、助手席に一応声を掛けてみる。
先輩刑事は「んー」と唸りながら 両腕を頭の後ろに組んだ。

「いや俺はいいや。…あ、でも…そうだな、じゃあプリン頼む」

ずいぶん可愛い要求をされた。
「了解」と頷き返して、美柴は運転席のドアを閉めた。



最寄りのコンビニまでの道のりを歩く。
空腹と眠気にぼんやりとした頭は、ふと過去を思い出す。

(プリン……そういえば……)

美柴が初めて中条に会ったのは、美柴は中条を結婚詐欺の容疑で張り込み中だった時だ。
今と同じように休憩がてらコンビニに飯を買いに行ったのだ。
その時、中条が手に持っていたのは 一個のプリンだった。

もう、一年以上前の話だ。


━━━━



「刑事さん?」
買うものを持ってレジに立った瞬間、背後からそう声を掛けられた。
思わず、美柴はギクリと振り返ってしまった。
後ろには、よりによってターゲットである中条が並んでいた。

「…違います」
動揺して一瞬身体が固まってしまったが、はっきりとそう否定した。

(分かりやす…)
しかしその否定の様子が、返って中条に確信を与えていた。

「へぇー。じゃあ最近この辺に越してきたか何かか?」
「……いえ」
「おっかしいなぁ。なんか最近よく見掛けんなぁーと思ってな。あんたを」
中条はわざと背を屈め、覗き込むように美柴を見た。
口元を薄笑わせて 挑発的な含みを持たせる。
その態度に 美柴はムッと眉を寄せるが、ここで自分が刑事であることを認めるわけにはいかない。

「…気のせいじゃな」
「ひょっとして俺、刑事に張り付かれてんのかなーとか思ったりして。ちょっとフェイントかけていつもと時間ずらしてコンビニ来てみたんだけど」
刑事の反論を最後まで言わせずに、中条が畳み掛ける。
美柴はしばらく中条の笑みを睨んだが、ツンと顔を背けて 受け答えを拒絶した。

(早くここを離れなければ)と内心気が気でないのだが、こうゆう時に限って レシートが切れたという理由で会計を待たされてしまう。
案の定、後ろの中条は肩ごしに美柴の買い物を盗み見て 「ふーん」と頷いている。

「なんだ。やっぱ張り込み中はあんぱんと牛乳なのか」
「…知りません」
「それで、取り調べ中はカツ丼?」
「…知りません」
「刑事さん彼女いんの?」
「いません。」
「やっぱ刑事なんじゃねぇーの」
「・・・・・。」

こうゆう言葉遊びは心底苦手だ。
チラと振り返ってみると、中条はニヤニヤと楽しげに笑っている。

「…〜違います」
こんな状況でも、否認しなくてはならないのが刑事である。
ようやく会計の終わった袋を持って、美柴は足早にコンビニを立ち去った。
中条は 少しポカンとした面持ちで、去っていた刑事を見送る。

(……コントかよ)
なんとも正直な刑事である。



「刑事さん?」
「……〜」
コンビニで引き離したはずの中条は、何故か美柴の後を付いてきた。
手にはプリン一個が入っている袋をぶら下げている。
「なぁ、刑事さんってば」
何度も声を掛けられるが、美柴は頑として無視をした。

「刑事さんのアダ名ってもしかしてジーパン?」
「履いてない!」
ずいぶん古いネタを出され、思わずツッコミながら振り返ってしまった。
中条は はてと美柴の顔を見つめて、その足元に指を差す。

「あんたの足元、犬のウンコ踏んでんぞ」

自分の足元の惨劇を見た美柴は、しばらく真っ白になって凍りついていた。



「・・・・・。」
ガリョ、ガリョ、ガリョ。
若い刑事がアスファルトに靴を擦りつけて 犬のフンを刮げ落とす。その背中が妙にしょん…としている。

「大丈夫だって。もうあらかた取れたっつーの。な、刑事さん」
内心吹き出して笑いそうなのを堪えて、中条は刑事をフォローする。
そんな中条をチラと見上げて、美柴は観念したように短い息を吐いた。

「…中条伸人さん、ですね」
そうして、胸ポケットから警察手帳を取り出すと、中条に見せる。

(……仕切りなおしたか)
凛とした面持ちで自分を見据える刑事に、中条は内心感心しつつ 頷く。

「あぁ、そうだ」
「警視庁捜査二課の美柴と言います。お話がありますので署までご同行願えますか」
「任意だよな?」
「・・・・・。」
これだから最近の刑事ドラマは…。
気を張っていた美柴は、うんざりと肩を落とす。
「……そうだ。でも理由もなく断るとかえって不利になる」
「理由ならあるぜ」
そう言って、中条は持っていたコンビニの袋を美柴に掲げる。

「……それがなんだ」
「連れの女が風邪引いてて。コレしか食いたくねぇーとかワガママ言いやがってよ。まぁでも、風邪の時ってノド越しいいもんが良いっていうしな」

中条の言葉に、一瞬、美柴は「え」と目を見張った。

「……彼女、いるのか」
「いちゃ悪ィーのかよ。体弱ってる時って心細かったりすんだろ?まぁ出来るだけ傍にいてやりてぇーんだよ。だから今回はちょっと勘弁してくれ」
面倒だと言いながらも、どこか優しさを含んだ言い方。
容姿が無駄に良いせいか、こんな些細なことでやけに男前に感じられる。

「…………」
嘘かもしれない。
そう思いつつも、そんな事情を聞いたら無理に引っ張っていくわけにはいかない。
むしろ嘘でなかった場合、その彼女に悪いことをしてしまう…。

「……分かった。なら、日を改めるということで…」
渋々、美柴が折れることにした。
「悪ィーな、助かるぜ。刑事さん」
謝る中条は、慣れた様子で美柴の肩に腕を回す。
馴れ馴れしく肩を組まれた美柴は「触るな」と、その腕を振り払う。
拒絶された腕を退かす瞬間、中条の手はまるでマジシャンがカードを引き抜くような正確さで、美柴の胸ポケットから何かを抜き取った。

「じゃあ、明日の予定は特に…」
触られた肩をパンパンと汚れを落とすように叩いた美柴は、スケジュールを合わせようと中条に目を向ける。
しかし、中条の姿は忽然と消えていた。

「・・・・・。」
誰もいない道路の真ん中で、美柴は目蓋を瞬いて、呆れかえる。
(……逃げ足の早い…)
しかしあの男の行動範囲は把握しているし、あの様子なら怖気づいて逃げることもないだろう。

『出来るだけ傍にいてやりてぇーんだよ。』
(………。)
車に戻りながら、中条の言葉を思い出す。

(そうゆうのが、女を騙すコツってわけか…)
そう蔑みながらも、自分の左手を見つめてしまう。
……そんな簡単なことも、自分は出来なかった。
優しい嘘もついてやれずにいた……。

込み上げてくる自己嫌悪に沈んで、美柴はとぼとぼと車に戻っていった。



翌日の夕暮れ時。
中条と美柴は昨晩と同じコンビニの前で鉢合わせた。

「……〜中条伸人…ッ」
実際には鉢合わせたのではなく、美柴が中条の帰りを待ち構えていたのだ。
ギロリ!と厳しい顔で睨みつける美柴に、反して中条は余裕の笑みで返す。
「おう。昨晩はどうも。美柴鴇さん?」
「〜〜〜!!」
中条の手が、美柴の警察手帳をひらひらと掲げて見せていた。

美柴は昨晩、スられた事に全く気がつかなった。

「〜〜返せ!!」
勢いよくそれを奪い返した美柴は、非常に噴気した様子で中条を睨む。
「公務執行妨害だ…!」
「大丈夫だよ、悪用はしてねぇーから」
「〜そうゆう問題じゃない!」
「もっと警戒心持ったほうがいいんじゃねぇーの、刑事さん?」
「うるさい…余計なお世話だッ」
「……あれ。もしかして気にしてる?」
「〜〜〜っ」
反論出来なくなった美柴は、とにかく手帳に何かイタズラされていないかと、警察手帳を広げる。
そこにあるのは、自分の無愛想な顔写真と肩書きの明記。
そして………、

「……おい、」
急に しんと静かな声色で、美柴は帰ろうとした中条を引き止めた。
「あ?」
「……この中に、指輪が…入ってなかったか」
「…あぁ、あったな」
中条はコートのポケットを探り、そこから取り出した指輪を摘んで 美柴に見せた。
「コレだろ」
「…返せ」
「ずいぶん高そうだな。アンタのじゃあなさそうだ」
一瞬だけ、美柴は目を伏せた。どこか心細げな影が、その頬に落ちる。

「……は、母親の形見だ…」
「へぇー、そうなのか。俺はてっきり、恋人にあげたモンかと」
美柴が嘘をついているのなんて、目に見えて明らかだった。
しかし中条はそこを追及せず、美柴の手を取った。
握ったその手の平に 丁寧に指輪を乗せる。

「…綺麗な指輪だな」
「…………」
静かで 真撃な甘い声。優しい手のタッチと、微かな微笑み。
まるで女性を口説くような素振りに、美柴は少し眉を顰める。
チリっと胸の奥で焼けるような痛みがあった。

「…あんた、今日こそは時間あるだろ。署まで一緒に」
「任意だよな」
途端に、中条の表情は詐欺師へと早変わりだ。

「やっぱり風邪のひきはじめと治りかけは大事って言うからな」
「そうやってその女性も騙してるのか」
じゃ、と逃げようとした中条の背中に、美柴は沸々と込み上げる憤りを突き刺した。
この苛立ちは、中条に対してなのか…自分自身に対してなのか…。
ほとんど八つ当たりだと分かっていながらも、責める言葉は止めることが出来なかった。

「いくら引き出せるか計算しながら、スカスカでデタラメな歯の浮くようなセリフを吐いてポイントを稼いでるんだろう」
「…………」
中条は特にこれといった感情を見せず、美柴をじっと見ていた。

「―…この、結婚詐欺師が」

ただその言葉に、ほんの少しだけ笑った。
「だからなんだ」と言っているような、少し寂しい表情だった。
何も言い返さずに帰っていく中条の背中を見据えたまま、美柴は手にした指輪を握りしめていた。



「…………」
車に戻った美柴は 少しだけ走らせて、土手の脇に駐車した。
車から降りると 広い河が夕日の赤い光を反射していた。
とてもロマンチックな景色ではあるが、今の美柴のその情緒を楽しむ余裕はない。
じっと、手の平にある指輪を見つめる。

『てっきと、恋人にあげたモンかと』
図星だ。その通りだ。
何もかも見透かして、余裕綽々と笑んだ中条が許せなかった。
……そしてそれ以上に、こんな思い出の品にいつまでも縋っている自分が情けなかった。

『綺麗な指輪だな』
何も知らないくせに。あんなのは上辺だけの言葉だ。
結婚詐欺師である中条に、この指輪の何が分かるというのか。
そこに込めた想いや苦悩なんて、分かるわけがないのだ。

(…あんたなんかに、何が……)

ぎゅっと強く指輪を握りしめる。
悔しくて、唇を噛み締めた。
大きく振りかぶって、指輪を河に向かって投げようとした。

手の中から指輪が離れていく、その直前、

「―…おい美柴!」
「!?」
急に背後から大声を掛けられて、驚いた身体が変な方向に力んでしまった。
遠く遠くへと飛んでいくはずだった指輪は、思った以上に近場に ポチャンという可愛らしい音を立てて沈んでいった。

「母親の形見なんじゃねぇーのかよ」
「な、んで…!帰ったんじゃないのか…!?」
目を見開いて振り返った美柴に、中条は肩を竦めて 誤魔化す。

「あーあー、大事な指輪なのに。どうしたんだよ?」
「…っ」
まさか「図星を言い当てられて自暴自棄になりました」とは言えない。
ぎこちなく返事を探す美柴は、中条から顔を背ける。

「…お、落とした……だけだ」
「…へぇー、そうなのか。…でもそんな風には見えなかったっていうか……まぁいいけどよ」
本当は見透かしていることを隠し、中条は川辺を見る。

「どこ行っちまったかな。そんなに遠くには落なかったよなー」
「…もういい。とっくに流されてる。…見つかるわけない」
「でも大事な指輪なんだろ」
「……仕方ない。自分の不注意だったんだ、諦める」

ざぶ。
車に戻ろうと河に背を向けた美柴は、背後から聞こえた水音にハッと顔を上げた。
ざぶざぶざぶ。
「!?」
振り返ると、中条が躊躇なしに河の中へと足を進めていた。
「何してる…!?」
「いや、意外と夕日で光ったりとかするんじゃねぇーの?」
中条は気の抜けた声色でそう応えながら、ズボンやコートが濡れるのも気にせず、ジャブジャブと膝下までの水位を歩き回る。
「そんな…!構うな…!見つかるわけないッ!」
慌てて川辺まで引き返した美柴は、探している中条の背中に声を投げ掛けた。

「そうか?見つかるかもしんねぇーぞ、案外」
「だから、もういい…!」
「良くはないだろ」
「〜〜いいんだ…!!」
どれだけ引き止めても、中条は指輪を探そうとした。
その姿に、美柴は言葉が見つからずに立ち尽くす。

いつまでも引き摺ってはいられないと分かっている。
けれど、自分ひとりでは完全には捨てられない。
こうして探してもらえることに、泣きそうになっている自分。
忘れたいのに、忘れられない。
喉の奥が、込み上げる気持ちで苦しくなっていく。

「〜〜〜っ!!」
耐え切れず美柴も河の中へと駆け出して、中条のコートをグイ!と引っ張った。


でも、もう縋っていてはいけないのだ。


「…っもう、……いいんだ…」
自分よりも大きな背中にきゅっとしがみついて、額を埋める。
驚く程弱々しい声が出て、自分でも恥ずかしくなってしまった。

「・・・・・。」
中条は突然後ろに引っ張られて驚いたが、背中にしがみつく美柴を肩ごしに見下ろして 少し考える。
困ったように俯いたままの美柴と向き合って、その両腕を握った。

「…?」
ガシ!と予想外の強さで腕を取られた美柴は、怪訝に顔を上げた。
その時にはすでに、中条の作る影が美柴を覆っていた。


ちゅ。


「!?」
重なった唇と唇に、美柴は目を見開いた。
急速冷凍されたように、カチンコチンに身体が凍りつく。
「なっ、…!?」
言葉にならない動揺の声を上げる隙間を縫って、中条の舌が美柴の唇をこじ開けた。
身を引こうとするのを許さずに 腰と腕をしっかりと捕らえる。
「ッん!」
まるで口内を食い尽くすかのように舌を絡めてくる中条のくちづけに、美柴は慌てて首を振って逃げた。

「な、何、し、…て!!」
「お前童貞か?」
「!?〜そんなわけないだろ…ッ」
「いやでもなんか、凄ぇービビってるからよ」
「〜当たり前だ!放せ…ッ!」
「断る。」
身体を引き剥がそうとする美柴を、中条も力ずくで引き寄せる。
二人が暴れる水面がバシャバシャと揺れて、水が跳ね散った。

「何考えてるんだ…!」
「さぁな?でも今確かに(コイツ可愛いな。食っちまうか)とは思ったな」
「!?」
中条の言葉に、美柴の身体はヒクリと硬直した。
確実に、自分はこの結婚詐欺師に襲われている。

反撃の手が緩んだスキを逃さず、中条は美柴のスラックスに手を伸ばす。
「!」
布生地越しに、急所をやわやわと揉まれる。
「もう二人ともずぶ濡れだしよ、このままどっか行こうぜ」
「〜…ッ」
耳元で吐息混じりに囁く声が、甘く低い。
この声だけで 腰を抜かす女性も多いことだろう。
……現に美柴も少し揺らいでしまった。

「車ん中でも俺は構わねぇーけど、どうせならベッドの上のほうがいいな。俺んちにするか」
「〜っ、家って…彼女が風邪引いてるんだろ…!」
「美柴お前、マジで俺のマークしてんのかよ。俺、今フリーだぞ」

美柴にとっては、それは衝撃の事実であった。

「・・・・・。」
「・・・・・。」
一拍、美柴と中条はきょとんと見つめ合った。

「……プリンは?」
「俺の食後のデザート」

騙されていた。……やっぱり。

ざばっ!
美柴は中条の腕から抜け出して、河の中から川辺へと駆け上がった。
ポツン…と独り河に残された中条を、厳しく冷たい眼で見据える。

「署に戻って逮捕状を請求する。」
「…はっ。出来んのかよ?今の段階で」
中条も、もう悪ふざけの無い、薄笑う犯罪者の顔をする。
「被害者に積極的な協力をあおいで上を説得する。あんたのような人の心を弄ぶ悪漢を野放しにはしておけない」
そして美柴は、中条の眉間に向けて、凛とした姿で指を差した。

「次に会う時は、あんたを逮捕する」

その宣言は、ある意味このあとの二人を運命付けるものだった。

「……きゅんときた」
「・・・・は?」
「あー、何だコレ。ここ数年で一番キュンときたじゃねぇーか」
「・・・・・・は?」
「結婚詐欺師を落とすってお前、一体何者だ…」
「??………何者って……刑事だ」
「いやそうゆう意味じゃねぇーよ」

勘弁してくれと言いながら、中条はどこかニヤニヤとその刑事の挑戦を受けて立ち。
刑事はこの目標を胸に、ここから一年間の尾行を開始するのである。


━━━━


たどり着いたコンビニで頼まれたプリンを探しながら、美柴はふっと吹き出すような溜息を吐いた。

(……思い出すと…くだらない出会い方だな)
道すがら思い出した中条との過去に、自分でも呆れてしまう。
「…………。」
…別に懐かしんでいるわけではない。
……別に、そうゆう感傷的なものではなく、寂しいというわけでもないのだ。

「…あ。」
プリンは売り切れだった。
先輩には別の甘味を買っていこう。そう思い直して、やれやれと小さく首を振る。

(………中条伸人、)

今ごろ、どこで何をしているのだろう……



「…あー、プリン買い過ぎたな。いくら思い出したからって買い占めはねぇーわ」
コンビニの裏の道で 煙草を吹かす男がいることを、美柴は知らない。



■ラスト!


[ back to top ]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -