ポップな曲が流れるキッチンで、私は一生懸命チョコレートを溶かしていた。明日はバレンタインデー私が作ったチョコレートを彼は喜んでくれるだろうか。
刻んだチョコレートをゆっくりと湯銭で溶かしていく。私の心も中に溶けていけばいいのに。きれいに固めたチョコレートは、バレンタインまで冷蔵庫の中でゆっくりと眠る。
2月14日。バレンタインデーは平日。私たちは普通に授業がある。校門前で待ち合わせて一緒に帰ろうと約束していた。
校門前で、淳にあって私は一つの袋を彼に渡した。
「淳、これ、バレンタインのチョコ」
「お、さんきゅ!なあ、食っていい?」
私の渡した袋の中から、チョコを取り出す淳。きれいにコーティングされたチョコレートをつまみ、パクリ、と食べた。
「お、うまい、じゃん」
と、言った直後、敦は校舎の中に走って行った。
「淳?」
学校から出てきた淳は、顔を覆っていた。そのまま、「ごめん、先帰るね」と言って去って行った。
「何よ!なんなのよ!あいつは!!!」
それを見た私は、彼の帰った方向とは反対に歩き始めた。私の頬には涙がつたい彼を憎らしく思うと同時に自分がひどく惨めであると思った。
チョコレートは彼がの気に入るものではなかったらしい。
(だからって吐き出すことないじゃない!)
もう誰にも会いたくはなかった。
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あとがき
文藝屋「翆」の締め切りをはるかひと月以上ぶっちぎる方翡翠です。
反省してます。きりきり活動します。許してください。
さて、今回の作品は、主題がありまして。そっちのほうを後半に持ってくるにあたり、前半に頭を抱えること半月。ぽしゃったプロット8つ(本当)という難産でありました。
これからもお付き合いのほどよろしくお願いいたします。