書籍紹介企画【第一回】
一番初めに読んだ小説
空色勾玉
著/荻原規子
紹介/炯

あらすじ・紹介文

豊葦原は不死の命を持つ照日王、月代王率いる輝(かぐ)の軍勢により統一化が進んでいた。輝の領地の村娘狭也は十五の祭の日、輝と敵対する闇(くら)の氏族の者から、己が「闇の巫女」「水の乙女」であることを告げられる。彼らを拒み、憧れだった月代王のもとへ仕えることとなる狭也。しかしそこで「大蛇の剣」を祀っていた輝の末御子稚羽矢と出会い、狭也は豊葦原を賭けた輝と闇の戦いに呑まれることとなる。永遠の光と儚い命、二つの美しさが奏でる壮大な古代ファンタジー。

本にまつわるエピソード

 母は本を好み、よく図書館から本を借りてきた。今はないコンクリート色の図書館は主に児童用の本が置いてあって、私も母と共に児童書を好んだ。というのも、私は母が借りてきた本しか読まなかったからだ。見たことのある背表紙しか借りなかった。他の本は手を出すのが怖かった。けれどいつかは母に本を紹介したい、母の先を行きたい、そんな思いをしていた矢先、見たことのない空色の背表紙が目に入った。美しい明朝体で四字「空色勾玉」。思わず本棚から抜き取っていた。はじめて自分の意思で一冊の本を手にし、面白いかどうかもわからない未知の世界の表紙を開いた瞬間である。
 はじめて本を選び、はじめて自分の興味の赴くままにページをめくり続けた。なんとも快感で、読み終わって早々母に「面白かったよ、読んでみて」と言いに行った。私の「これ面白かった」の一言に、母は言う。「ああ、それ面白いよね。だいぶ昔に読んだ」。
 はじめて母に敗北感を味わった瞬間である。
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