SAKURA
あの薄紅色の季節がまた来るんだね。
君が好きだと言った、あの季節が……。

「君と眠る四月」

この頃、僕は夢を見るんだ。
とてもとても幸せだった、あの頃の夢を。
あの頃はまだ君が僕の隣りで笑っていて、はにかむような君の笑顔が僕はとても大好きだった。
ああ、今はもう懐かしい、君の想い出。
今、君は一体何をしているの?

「ねえ、記念にキスをちょうだい」

照れながら僕に言った、一世一代の告白。
お互いに頬染めて抱きしめ合ったね。
今でも覚えている、君の白い腕、白い足、長い黒髪…その感触を。
ねえ、君は今も覚えていてくれるかい?
お互いに好き同士だった、あの気持ちを。

「ほら、今日も桜が咲いているよ」

思い出すのは最期の言葉。
期限付きと定められた、君の命とこの桜の、その儚さになぞらえて。
僕は君を「さくら」と呼んでいたね。

そして、僕は一本の桜の木の前で立ち止まる。
さらり、さらり…今はもう風薫る五月。
すっかり新緑に染まってしまった想い出の桜がそこにはあった。

でも、僕の目に映るのはあの時の楽しい想い出。
桜の下で眠る君へ送る、永久の詩。

僕は君と眠り続けることを選んだよ。
それは君が望んだ事じゃなかったかもしれないけど。

この頃、とても眠いんだ。

そして、僕は夢を見る。
永遠に覚めない夢を、君とともに……。

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