シリーズ完結に添えて
 こんにちは、灯火野です。
 シリーズ「君と僕のリサイタル」が完結いたしました。不定期な更新にもかかわらず読んでくださった読者の方に感謝申し上げます。約一年間で6作品と15曲。我ながらよく頑張った方です。

 最終作に挿入されている詩のタイトルは、作品のタイトルと同様「Nameless Song」です。和訳の「名もなき歌」と迷ったのですが、もともと「英語を訳したような文」をイメージして書いたので、タイトルだけでもその雰囲気が伝わればと思って英題にしました。一通り読んでいただいてもわかるように、このシリーズの登場人物は徹底して「僕」と「彼女」の二人だけに絞りってあります。しかも彼らには名前を与えず、ストーリーは一貫して「僕」の一人称視点から語られています。まあ一人称視点なのはそれが一番書きやすいからなのであまり深い意味はないのですが……。”Nameless”はそんなところも含めてつけたタイトルなのです。名もない二人の若者の、タイトルもつかない小さな恋物語。

 小説に歌をミックスさせるという発想から、読み切りの予定だった短編がシリーズ化し、本作が誕生しました。その発想の爽やかさとうまくバランスが取れるように、恋独特の憂鬱さ、重さ、甘ったるさを表現できたらいいなと思いながら書いていました。頼られることで自分の気持ちとどうにか折り合いをつけようとしていた主人公「僕」と、友人の思いがけない才能に触れながら次第に惹かれていく、素直になれない「彼女」のやり取りは、書いている自分でももどかしいものがありました。
 「彼女の消えそうな心の火が消えないように守りたい」と心に誓いながら、彼女の心の一番近いところを独占する僕と、恋人の存在を自分からは全く匂わせることなく、自分を構ってくれる友人の興味をうまくひきつけ続けようと必死になる彼女。二人の”不器用な狡さ”は、単純にそのまま書いたらハッピーなエンドを描いてくれないような気がしました。バレンタインデーという特別な日の魔法の力を借りたというわけですね。

 今まで幾つか書いてきたけれど、どうやら自分は恋を通して人の価値観や人生観を書くのが得意みたいです。似たり寄ったりな作品にならないように気をつけないと。。

 最後になりましたが、ひっそりと構想中のお話について簡単に紹介して挨拶を締めたいと思います。
 次に発表するであろう新作は、「男の子に恋する"女の子”の話」。キーワードは”三本目の次元軸”。
 ……お楽しみに。

 2016年2月某日 灯火野

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