きっと、君と
泣きたくなったら、“そら”をみあげて
俺のことを思い出して欲しい。
たしか、あんたはそう言った。
今、“そら”をみあげてる。
あんたもこの“そら”を見てるのか?
「吾兄(あにぃ)……。」
呟けば、“そら”の向こうであんたが笑った気がした。
あれは?これは?と、右も左もわからないで、何もかもをあなたに聞いていたあたしにはじめてあんたがちゃんと教えてくれた言葉。
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「あぁ…」
澄み切った碧。今日の空は彼女を思い出させる。
今、どこにいる?幸せか?と彼女に聞きたい。
旦那は出来たか?
ちゃんと働いているか?
俺は今 東京にいるよ。
平和な時代を生きてる。
あぁ、碧い碧いこの“そら”。
あれは?これは?と、右も左もわからないで、何もかもを俺に聞いていた彼女がにはじめて俺がちゃんと教えた言葉。
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「こんなところに、どこから迷い込んできたんだか。」
私は捨て子だった。山中に捨てられていた私を拾った人がいた。それは“お師匠様”だった。そして、“お師匠様”の弟子で、私の兄弟子の“吾兄”に育てられた。
ある日、吾兄は私にとある言葉を教えたのだ。
“そら”
そのころの私はまだ、舌足らずで発音がよくできなかった。
“ひょあ”
吾兄が笑った。あの頃のあたしは何もわからなかったから、なんで彼が笑ったか理解できなかった。
彼が笑った、ただその事実がうれしくて、私にとって大事だったんだ。
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目が覚めた。懐かしい夢を見た。あいつの夢だった。
「今は何をしてるんだか。」
まぁ、どこかで生きているだろう。妹弟子は。
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