「地獄の業火っていうけどさ、悪魔にとって火ってそんなにつらいもんでもないんだよね。」
料理の途中で火傷してしまった私の手に、温度のない手で触れるセン。その手が優しくて、うれしかった。
「地獄の業火は悪魔を焼く炎じゃないの?」
「まぁ、そういわれてるけどさ、実際人が温泉に入るのとそんな変わんないって。…人が入ったらひとたまりもないけどね。」
そばにいるようになってからセンは、少し変わったような気がする。それは、もちろんいい方に、だが。
「ふふん。これでいいでしょ。やっぱ僕天才だね。」
センが手を放すとそこに火傷の跡はなく、元の私の肌があった。
「ありがとう。」
「どういたしまして。ヨーコってホントおっちょこちょいだよね。」
ほら、気を付けて、続き作ってよ、なんて。前は言わなかったのに。
「ねぇ、私はあなたにそばにいてくれる対価を払えているかしら?」
そんな風に、あなたに聞いてしまったの。
「十分さ。僕は知りたいことをちゃんと知れた。君のおかげでね。」
素敵な笑顔で笑う、あなたがいれば大丈夫。
Fin.