〜A word makes me yours
たった一言。それで彼は私の心を揺さぶったのだ。
「なぜ、なに。あらゆるものに疑問を持った時。それは僕らの世界の終わりの始まりなんだ。」
夕日をあびて、そうつぶやいた君はどこかここではない遠いところを見ていた。
「ねぇ、崩壊していく世界を見ているのって、どんな気分なのかな」
「絶望以外見えてないということはね、存外に苦しいものなんだよ。
どれだけ前を向いて歩いて行こうとも、見えるのは闇と終わりの見えない道なんだから。
これほどに苦しいことはないさ。」
とある夜の、星空の下。悪魔の羽をはやした天使は私にそう言った。
「セン」
「ヨーコ、君は暗闇の中にわざわざ入る必要はないんだ。美しい世界で生きていられるのなら、人という生き物はそれが一番なのさ。」
そういうと、センは立ち上がった。また、センは私を置いて行ってしまう。漆黒の翼をはばたかせて、また、と私に小さな希望を植え付けて。
「ねぇ、また来てくれるよね?」
「天使は嘘をつけない。またっていったら、またなんだよ。」
今度こそ、本当にセンは行ってしまった。また、がいつになるのかはわからない。センが何者なのかもわからない。ただ、あの漆黒の翼は私に幸福を運んでくる不思議な翼なのだということだけはわかっていた。
Fin.
--------
あとがき
「退廃的ファンタジア」第一話「A word makes me yours」をお届けします。
短編集、どう動くのかは一切未定です。
更新も一切未定です。
黒曜石翡翠