今様歌物語
〜うまく言えない〜

02


 後輩にけじめを示す、か……。先輩達のこの言葉で、一つひらめいたことがあった。漫画的に言うと、僕の頭に一つ電球がついたような描写だろうか。


「岡田さん、まず手始めに新入生に向けた冊子を作ってみませんか?」

「新入生、か」


 岡田さんの興味深そうな視線が先を続けろ、と言っていた。


「部活の雰囲気だけだったら、確かに仮入部でもわかります。きっとこのほのぼのとした和やかな雰囲気は、誰にとっても好印象だとも思います。でも、僕たちがどういう力量を持っていて、どれだけ本格的に活動しているかは、仮入部だけじゃ分からないでしょう」

「確かに……自己紹介だけじゃ伝えきれないことだってあるもんね」


 こくりと頷くことで、僕は榛紀さんの言葉に同意を示す。


「ふむ……」


 岡田さんは言葉を止めて考え込んだ。


「有料配布じゃ、新入生はこないよな。採算は……」

「印刷も製本も手作りにすることで、コストを抑えましょう。目的はあくまでも、新入生に対する一種のデモンストレーションですから」

「よし、決まりだ。俺たち以外にも寄稿者を募ろう」


 僕にニッと笑いかけて、岡田さんは目にも止まらぬ早さで携帯を操作した。少しも待たない間に僕らの携帯が震える。


「いつものことながら、素晴らしい携帯さばきですなぁ」


 本文を確認してパクッと携帯を折り畳んだ榛紀さんの半ば飽きれたような賞賛に、岡田さんはもう一度眼鏡をあげることで応えた。




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件名|共通連絡
本文|
 サークル長の岡田です。今年度は一年間お疲れ様でした。
 来年度も多くの新入生が入部を希望してくれることを期待し、
 サークル紹介冊子の作成を企画しています。
 自分の作品(小説、詩、短歌等、形式は自由)の掲載を希望する部員は、
 提出予定作品のジャンルを明記して返信お願いします。
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