瞼を閉じればいつだって君の姿が見える。私、君の姿しか知らないけど、君は私を知っているだろうか。


ちゃぷん



 夢の中、水の中にいるような感覚。真っ暗な世界。ゆっくりと目を開けば、勿忘草色の何もない背愛。存在するのは私のほかに、もう一人。

 少し細い手足、灰色で、裾がボロボロになって、所々に赤黒いしみの残る服。眠っているようで、閉じられている目。何よりも目を引くのは、茜色の髪。

 私に個の世界にいるとき、彼が起きていることはない。いつも彼は眠っている。

 
 サーッと目の前が白くなる。これは、目が覚める合図。この美しく悲しい世界とのお別れの合図。

 さあ、仕事の時間だ。


 瞼に張り付いた世界はきょうも消えない。

fin.


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あとがき
書きたいことが書ききれてないので、シリーズ化したいなと思っています。
今続きちょこちょこ書いてるんで、長い目で見てあげてください。
黒曜石翡翠


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