十月七日
 十月七日、火曜日。
 朝からベッドにうずくまっていた。両親も、昨日のショックを考えたのか、何も言わずに、仕事に出かけて行った。
 森では嵐が過ぎ去って、木々が倒れて、僕は木の下敷きになった。身動きが取れない。逃げることもできたはずだ。でも、逃げなかった。理由は、僕も知らない。
 目が覚めてから、かなりの時間がたったころ、家の中で、電話の呼び出し音が鳴り響いた。
「めんどくせえな」
 最初は、無視しようと思ったが、いくらたっても鳴りやまない。だんだんといらいらしてきて、電話の前へ向かった。
〈中学校〉
 学校など、かなぐり捨てたい気分だった。朝、親が欠席の電話をしたはずなのに、なぜ。そう思っている間にも、呼び出し音は鳴り続けた。仕方なく、受話器をとる。
「もしもし、サクラタニユキヤさんのお宅ですよね。わたくし、サガダイスケと……」
「サガさん、どうしたんですか」
 まさか、サガさんが電話してくるとは思わなかった。
「ああ、ユキヤくんか。今日は欠席だって聞いてね、どうかしたの?」
 僕は迷った。昨日の話し合いの内容を伝えるべきか、しばらく黙って考えていた。
「……ごめん。言いたくなかったら言わなくてもいいよ」
「いえ、実は……」
 僕は、昨日の話し合いの結果、僕に伝えられたことすべてを、サガさんに話した。サガさんは、少し黙った後、優しい、静かな声で僕に言った。
「僕は味方だから、絶対に。信じてほしい」
 森では、木々に下敷きになった僕に、救いの手が差し伸べられる。
 その夜、両親は帰宅した後、「明日は学校に行ってほしい」と言ってきた。「図書室で構わないから」と。
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