3 | ナノ
世界をうごかす魔法
所詮餓鬼だもの
煌めくだけのまぼろしがあったのになあ
爪先でなぞる雨上がりのにおい
あんまりにも半透明でばかだね
襟足にくっついたおまじない
海に星が還るように微睡む
水槽のなかで酸化する現実
乾いたくちびるで攫うえいえん
赤いリボンが包む淡い絶望
なくした小指だけ見つめている
つきさす毒の色に目眩
愛されるためのうそと嫌われるためのほんとう
シュガーレス・エスケープ
チョコレイト味のくちびるでさらってよ
ビスケットの亡骸を抱くおんなのこ
吐息が甘く味を付けるように
さながら魔法を知った指先
耳をふさいでいいから明日を見ないで
フォークで刺すおまじない
スプーンで掬う呪文
おもわせぶりなきみのくちびる
奪われた嘘がおすき
傷跡をください
あいされなかった証拠をください
ほしいものをほしがれない、なくしたがり
ふたりぼっちはいりません
せかいのすみっこできずあとは消さないで
召しませ心臓
やさしいうその魔法をつかう
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