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手のかかる先輩1ー2


「入って下さい」


そう言い扉を開ける。いきなり連れて来られ、入って下さいと言われて、どうしたらいいのか分からず、立ち止まっているとイライラしたような口調で「とにかく、入って下さい!」と中に入れられた。そしてソファーに座らせ1人にされる。

ここは…?

剣城の家?


「ハックシュン!!」


さっきまで外にいたせいかくしゃみがでる。すると剣城が戻ってきた。


「これ…暖まると思います」


目の前に出されたのは、ホットミルク。


「すみません、今それしかなくて」と申し訳なさそうに言いながら隣に座る剣城。


「あり…がとう」


有り難くそれを頂く。

甘いけど甘過ぎず、丁度いい甘さのそれ。…美味しい。次第に体が暖まっていくのが分かる。


「なにがあったんですか」


その言葉にビクッと反応する体。コップを持ったまま何も言わない俺の手から、優しくコップを離す剣城。


「もう一度聞きます。なにがあったんですか?」


まっすぐ見てくる剣城に、さっきの出来事を思いだし再度溢れ出てくる涙。


「つる、ぎ…っ…うっ…、俺っ…お、れっ…」


うまく話す事ができなくて、下を向き、ぎゅっとズボンを握りしめる。その瞬間、感じた温もり。上を向けば剣城の顔が。


「話は落ち着いてからでいいです。ずっと俺は傍にいますから。」


俺は剣城の肩に顔を埋め、歯止めが切れたかのように泣き出した。


―――


落ち着くまで剣城はずっと、抱き締めていてくれた。


「落ち着きました?」

「…あぁ」


「もう大丈夫、」と剣城から離れようとするが離してくれない。


「剣城…?」

「神童先輩…俺…」


ぎゅーと強く抱き締められる。


「教えて下さい。なぜ泣いていたのですか?誰に泣かされたのですか?」


さっきまでのトーンよりも少し低く話だす、剣城。


「剣城…」

「先輩、俺…《ピンポーン》

剣城が何かを話そうとした瞬間、家のチャイムがなる。もの凄く嫌な顔をしながら、しぶしぶ出ていく。


どうしたんだろうか…?


小さく、剣城と誰かのやり取りが聞こえる。


「えー!今日無理になったの!?」

「せっかく来たのにー!」

「すまない、家の用事で、」

「んー、じゃあ今度にしようか!また予定が空いてる日教えてよ!」

「分かった」

「じゃーねー!」

「またねー剣城ー!」



バタッと玄関の閉まる音が聞こえ、剣城が戻ってきた。


「すみません、」

「いや…それより、よかったのか?今の天馬と信助だろ?」

「…はい。また今度と約束しましたし、今の先輩を1人にできませんから。」

「もう、大丈夫だ」

「どこがです」


…うっ、


仕方なくゆっくり話だす。


「…さっき、霧野が狩屋に好きだと伝えているのを偶然見てしまったんだ。…俺はずっと、どんな時も傍にいてくれて支えてくれた霧野の事がいつの間にか好きになってた…ずっと一緒にいるせいか霧野も俺と同じ気持ちだと思い込んでいた。でも違ったんだ…。霧野は狩屋が好きだった。俺のことなんて…「嫌い、と霧野先輩は神童先輩に言ったんですか?そんなこと言ってないでしょう?」

「…でも」

「でも、じゃないです。嫌いって言われたわけじゃないなら良いじゃないですか。」

「良くない…」


また目に涙が溜まる。


「俺が、傍にいますから」


俺の目の涙を拭いながら、言う剣城。


「俺がずっと、傍であなたを支えます。それじゃ、ダメですか?」

「剣城…」


優しく笑う剣城。せっかく拭いてもらったのに、我慢できずまた涙が出る。


「ありがとう…あり、が…とっ…」

「本当に先輩は泣き虫ですね」


優しく頭を撫で抱き締められる。



「好きです、神童先輩」



不意に耳元で囁かれた言葉にドキドキする心臓。



「俺も、好きだ剣城………三国さんも天城さんも車田さんも南沢さんも2年のみんなや、天馬や信助、1年のみんな、みんな…大好きだ」

「は?」

「お前らみたいな後輩を持てて俺は幸せ者だな」


泣きながら、にこっと笑えば複雑な顔をする剣城。



…何か変なこと言ってしまったのだろうか?




(これは少し厄介だな…)


2012年7月2日
好きの意味を間違ってとらえている神童くん。剣城頑張れっ…!続くかも(。・ω・。)

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