もう本当、どうにかしてくれませんかこの人。

「名前!マネージャーになってくれ!」
『無理』

…そう、あの日からこんなやり取りが始まった。


◆◆◆◆


やっと高校生になった私。家が近いと理由で誠凜に入った。入学してしばらくしてからだった、隣の席の日向くんが木吉くんにバスケ部に入ってくれと誘われ出したのは。今日もまた誘いに来ているようで、隣だから嫌でもやり取りが聞こえる。すると日向くんが出ていき、伊月くんと木吉くんだけになった。木吉くんは帰るわけでもなく、伊月くんと話をしている。

「勝つためにとことん練習して少しでも上手くなって…好きなことに没頭する。それが楽しむってことだろ。ましてやオレ達は学生だ。全てをかけても足りないかもしれないぜ?」

その木吉くんの言葉に、なんだか心が締め付けられた。

「な!名字!」
『え、』
「帝光中女子バスケ部キャプテンだった名字、だろ?」

そう、私はあのキセキの世代がいる帝光中学の女子バスケ部キャプテンだった。まぁあのキセキの子らよりは遥かに力は劣るんだけど、女版キセキの世代なんて言われたな…。なんか嫌だよね、その言い方。でもまぁ、今ではもう過去形だけど。

『知ってたんだ』
「まぁ有名だからな」

そういう君も有名だけどね、「鉄心」の木吉くん。って言おうとしたが、やっぱりやめて適当に返事をした。

『ふーん』

まさか話かけられると思わなかったなーと思いつつお茶を飲む。

「なぁ、名字」
『?』

お茶を口に含んでいるため、返事が出来ず首をかしげる。

「マネージャーやってくれよ」
『ブブブーーー!!!』

突然の言葉に思わず、お茶を吹いてしまったが、驚きもせずそのまま話を続ける木吉くん。いやいやいや、驚けよ!せめて気にして!!女子高生がお茶を吹くなんてなかなかないよ!?

「この学校、女子バスケ部もないだろ?だから男子バスケ部のマネージャーに『断る』」とキッパリ言い、カバンをあさっていたら、伊月くんがティッシュをくれた。

ありがとう、と礼を言いながら机を拭く。

「なんでだ?」

『めんどくさい』と言えば、えぇー、とプクッと頬を膨らます木吉くん。ちょっと可愛い、なんて思ってしまったが、そんな顔されてもなぁ

「あ、ねぇねぇ!バスケ部集めてる木吉君ってキミ?オレ達も入れてくんない?」

すると、男の子二人がやって来た。今日はお客さんが多いなぁ…どうやら二人もバスケ部に入るみたい。

「マッネージャー!!かっわいいマッネージャー!」

ビクッと肩が揺れる。急に大きい声出すから、ビックリした…

「気持ちはわかるけどちょっと待って、あと人の話聞こうか!それに君がいきなり大声出すから隣の名字さんもビックリしてるし、」
「え、あ、ごめんね」
『いいよ別に』
「名字はマネージャーなんだ」
『よろしくね…って違うわ!!』
「ナイスノリツコッミ…」
『いやいや、感心してる場合じゃないでしょ伊月くん。私、まだOKしてないよ!?』

「え、」と驚いた顔でこちらを見る木吉くん。驚くとこ間違ってるくない?

『いや、だからOKしてないし!!』
「ね、ね、君、名前なんて言うの!?俺、小金井!こっちが水戸部!」

小金井くんが、興味津々な目で私を見てくる。

『…名字名前』
「名前ちゃんかぁ!よろしくね!」
『え?うん…』

よろしくって…まだ入ってないんだけど…いやいやいや、入る予定なんてないから!!

「俺は諦めないからな!じゃあ、またな!」と木吉くんは言い、皆は相田さん?って人のところに向かった。諦めない、って…。あんな真っ直ぐに見られたら、なんか、なんだかなぁ。


◆勧誘開始
(日向といい、相田といい、名字にも断られたな)
(大丈夫、きっと受けてくれるさ)
(その根拠はどこからくるんだ)
(なんとなく!)

この日からマネージャー勧誘が始まったんだ。



―――――

なんか、ありきたりな始まり方ですみません…


20140529 編集

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