罪ノ子
 発情 / 伊織


 今まで頑張ってきたのは、後で宏夢に褒めてもらえるからで、そうしてずっと愛情の見返りを求めてきた。けれど自分の正体を知ってからは、身の丈を越える願いに追い詰められるようになった。

「伊織、いい子じゃないもん……っ」

 泣きながら下半身を押し付ければ、拡げた後腔が固い先端に吸い付く。耐えきれない涙と鼻水が一緒になって美しい顔を汚した。

「いっ、入れて、中……ぐちゅって、駆蹴さんっ」
「こら、勝手にくっつけるな」
「だって、だって……、おかしくなる」
「……くそ……よせ、伊織」
「あっ、あふ……ん」

 唇の隙間をなぞる長い指を、迷わず口内に含む。相変わらず節くれた指が上顎に引っかかると、尖った八重歯を確かめるように唇を捲られて、溢れた唾液が顎を濡らした。

「は……あ、あぅ」
「……指で、我慢できるか」
「はぅ、うん、うんっ……」

 うっとりと霞む視界の先に、汗ばんだ首筋があった。さっき噛みついた所が赤黒く鬱血している。今まで血を吸わせてくれた宏夢の腕と同じ色だ。
 双方の優しさにしがみつく姿は、どれだけ哀れで自分勝手に映っているのだろう。
 瞳の上で盛り上がった涙の膜が、重力に負けて再び決壊する。

「……駆蹴さん、伊織を好きになって」

 どこまで好きになっていい?
 どれくらい好きになってくれる?
 これ以上傷つきたくないから、先に教えてほしい。

 切に迫る伊織を複雑な表情で見つめた駆蹴は、唾液の絡まる指を最奥にあてがった。
 愛液を溢す蕾は粘膜を晒し、その膨らんだ縁をひくつかせている。

「ん……っあ、あ」

 ゆっくりと滑り込む冷たい指。浅ましく歓迎した仮膣は、濡れた女性器の如く波打った。
 腹側の壁をくちゅくちゅと擦られるだけでも、白湯が流れたみたいに熱くなる。手前に張った前立腺を押さえられて、腰が抜けそうな快楽に襲われた。

「あっ……あぁ、ん、んぅ」

 そこは、完全に男を悦ばせる造りになっていた。
 綺麗な粘膜は充血して張り付き、卑しい蠕動を続けている。柔らかな襞は折り重なった段々で、奥にはつがいの肉芽が上下に組み合っていた。まるでカリ首に噛み付くような形をしているので、或いは一突きで達してしまうかもしれない。 
 愛撫する駆蹴の指も、自然と荒い動きへと変貌していく。

「か、けるさ……ハアッ、あんっ、あぁッ」
「……、伊織」

 期待に反り上がる駆蹴の性器は、二人の狭間で卑猥に揺れた。向かい合う伊織の幼い茎も、呼応するように振れている。反射的に二本まとめて掴んだ駆蹴は、そのまま激しく扱きだした。
 絡み合う生殖器に、お互い性急な射精感が高まっていく。

「あっ……!? アッ、あ、だめぇ……っ、あんっ」

 指の輪の間から二つの亀頭が顔を出すのを、伊織は茹だった思考で見下ろした。大きさも色も形も違うそれが擦れ合い、親指に抉られた尿道口がぷちゅっと蜜を弾いている。

「は……あ、くッ」

 限界が近い駆蹴の熱い溜め息に、耳たぶの産毛がざわめいた。
 揺れる体。混じった匂い、滴り落ちる汗。
 下半身が持ち上がるほどの激しいピストンに、伊織から溢れた潤沢な愛液がほとばしる。

「あーっ、やあっ、出るっ、出ちゃ……ッや、アッ!」

 胸元まで染めた伊織が、四肢を硬直させて痙攣した。
 薄い白濁が、ぴゅっと放出される。二度、三度と膣壁を押される度に恥ずかしい噴水は上がり、シャツを捲った伊織の胸を濡らした。


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