罪ノ子
 免罪 / 伊織


 抱き上げてから膝の上に乗せた伊織は、自ら蕾の縁を密着させてきた。ひくひくと脈動する様は性器そのものだが、入り口は不安に感じるほど小さい。

「あっ、あぁ……ひぃんっ!」
「……っ、く」

 しかし、構わずに腰を落としてくるので、圧力に負けた柔らかなぬかるみが包み込んでくる。思わず腰を引くと、伸びきった襞の隙間から内側の粘膜が捲れ上がったのが見えた。その薔薇色は、滲んだ愛液でぬめり、いやらしく光っている。
 明らかに、不道徳な結合。
 伊織の全てが、視覚と感覚の両方から駆蹴を追い詰めていく。
 しかし、今更中断できない。
 そうしたところで、他の男が伊織を孕ませるだけだ。

「はあっ、あぁ……あぁんっ、あー」

 反り上がった腹を両手で支え、子宮の辺りを親指でぐっと押し上げる。
 その行為に、何かの意図を感じ取ったのだろうか。うっとりした伊織は、自分の掌を重ね合わせてきた。

「んぁっ、アぁーっ、あ……っ赤、あかちゃ……っでき、できぅ」
「っ……伊織」
「……欲しぃーっ」

 ぎゅううっと締まった仮膣には、あの対になった肉芽が生えていて、剥き出しの括れを容赦無く挟み込む。思わず、熱い吐息が漏れた。

「っ……、あぁっ」

 齧りつくような刺激に耐えられず、恥骨がいやらしく痙攣する。射精させる為の絶妙な食い締めは、残酷なほど甘苦しい。
 生唾を飲み込んだ駆蹴は、伊織の脇腹を掴んだまま眉を寄せた。

「っ……く、そ」
「あっ、あ、あッん、んぅっ、あ」

 大きくM字に開脚した伊織は、花芽のような性器を揺らしながら、快楽に溺れている。その先端から、ぴっ、ぴっと白濁が散る様は淫猥の一言だ。
 溶けていく脳髄と、正常な思考力。
 背後にケイトがいる事も忘れて、変わり果てた伊織をかき抱く。

「伊織……っ」
「あっ、ああん、スキ……ッしゅ、きぃ」
「口、開けろ」
「あっ、あーん、っあ……っふ」

 堪らずに塞いだ、赤い唇。とろとろに湿った口内に舌を挿し込めば、溢れた唾液が顎の先まで滴り落ちる。伊織の八重歯が引っかかって鉄の味が広がったが、構わずに喉奥まで舐めた。

「ッ……!」

 弛緩した胎内に、滾った駆蹴の性器が落ち込む。出来上がったばかりの大事な場所を拓かれた伊織は、声にならない悲鳴を上げた。





 雨は、降りやまない。
 濡れるのも構わずに、伊織は一人で膝を抱えていた。
 金髪の少年――八重は、いつの間にか消えていた。「りゅう」には会えた? 一緒に名前を呼んだけれど、結局その後どうなったかはよく分からない。
 ううん、頭がぐらぐらするから、何も考えたくないのが本音。

「うっ、うぅ……ぐすっ」

 たった一人きりだ。計り知れないほど大切な人たちを傷つけたのだから、当然だと思う。けれど、だからといって寂しさが消える訳ではない。

「ずび……うえ、宏夢君」

 ごめんなさい。どんなに謝っても足りないけれど、伊織にはこれしか出来ない。

「駆蹴さん……」

 大好き。名前を呼ぶだけで、胸が千切れそうになる。
 自分の両手で肩を抱きながら、伊織は惨めに泣き続けた。

「駆蹴さん……っ、かけるさ……」

 鼻水も涙も一緒に流しながら、駆蹴を呼び続ける。
 あまりに切なくて痛い。
 こんなに苦しいなんて、聞いてない。
 ううん、本当にお腹の中がすごく苦しくて、熱くて……。

「……うっ、ずび……ん?」

 伊織は、朦朧としながら自分の腹を擦った。やっぱり、不思議と中が熱い。

 ……お、り……――伊、おり

 大好きな声に名前を呼ばれた気がした。
 はっと顔を上げると、濃い霧に遮られていた視界が次第に晴れていく。
 雨に混ざった、煙草の匂い。

「……っ駆蹴さん!」

 伊織は、もう一度愛しい人の名前を呼んだ。


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