思ノ子
 人体研究所 / ソラ


 青白い蛍光灯の光は、静かに部屋を照らしていた。


 じり、じり、
 じり……、


 さっきまで聞こえていた呻き声も、もう聞こえない。
 確かなのは、自分とアタルの心臓の音だけだ。
 思わず強く抱きしめた彼の頬には、滑った返り血がべったりとくっついていた。

「……ずっ」

 鼻をすすって、自分の腕の汚れていないところでそれを拭う。まるでアタルに罪をなすりつけたように見えた。
 目の前に散らばる肉片は、もう意思を持たない。ただの折り重なった血塊だ。

「ひゅぅ……っ」

 穴の開いた壁にすきま風が吹き込むような音がした。視線だけを動かすと、一番近くに転がっていた死体の瞳がこちらを見ている。
 喉が裂けていた。
 こちらに向かって伸びた血だらけの手は、触れることなく床へ落ちた。

 殺したかったんじゃない。
 俺たちはただ、お互いを守ろうとしただけだった。

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