失思ノ子
人体研究所 / ソラ
青白い蛍光灯の光は、静かに部屋を照らしていた。
じり、じり、
じり……、
さっきまで聞こえていた呻き声も、もう聞こえない。
確かなのは、自分とアタルの心臓の音だけだ。
思わず強く抱きしめた彼の頬には、滑った返り血がべったりとくっついていた。
「……ずっ」
鼻をすすって、自分の腕の汚れていないところでそれを拭う。まるでアタルに罪をなすりつけたように見えた。
目の前に散らばる肉片は、もう意思を持たない。ただの折り重なった血塊だ。
「ひゅぅ……っ」
穴の開いた壁にすきま風が吹き込むような音がした。視線だけを動かすと、一番近くに転がっていた死体の瞳がこちらを見ている。
喉が裂けていた。
こちらに向かって伸びた血だらけの手は、触れることなく床へ落ちた。
殺したかったんじゃない。
俺たちはただ、お互いを守ろうとしただけだった。
(1/16)
next
top story
Copyright(C)Amnesia
All rights Reserved.