台本が配られた日から、劇の練習が始まった。選ばれし[魔法使い]は6人。みんな、運動部出身の元アスリートたち。あたしたちの登場テーマソングは、幼少の頃流行った魔女のアニメの主題歌。
まず、一曲通して聴く。「懐かしいね」なんて言いながら。
「じゃあ次、あたしが踊ってみるから、よく見ててね」
そう言ってダンス指導の小浜ちゃんがリピート再生を待って仁王立ちになった。曲が流れ出す。小浜ちゃんは小中学でダンスを習ってたらしく、自分からダンス指導係を申し出た、プロフェッショナル。どんなダンスが見られるのだろうと楽しみにしていたくらい。
踊り出す小浜ちゃん……[魔法使い]たちは、目を疑った。飛ぶわ跳ねるわ回るわ、動きが目の中で残像になる。一通り踊り終えた小浜ちゃんは肩で息をしながらにっと笑って、
「これ、全部覚えてもらうから」
と言って見せた。一瞬の沈黙の後、[魔法使い]たちは弾けるように笑いだした。
「放課後の練習だけでは足りない」という小浜ちゃんの厳しいお言葉で、家に帰ってからも復習練習をすることになった。家に帰ってから日がくれるまで、あたしは近所の公園に行って練習することにした。ウインドブレーカにウォークマンを忍ばせて、一人ぴょんぴょんと練習する。教えてもらった部分までしか踊れないけど、それだけでも十分筋肉が疲れる。
(文化祭終わったら、絶対痩せてる……)
思わず苦笑いをする。