知っていた。
目の前に立つ、誰もが羨む容姿のこの男が、ストーカーよろしく篤に関わる妙な物を収集していることを。
学部が違うにも関わらず頻繁に遭遇するのを疑問に思うようになったのは、何がキッカケだったか。
学内外問わずこの男は出没するのだから、偶然とは考えづらいだろう。
彼氏から意味のわからんストーカー行為をされれば気味が悪い。
気味が悪いと思いつつ、その話題に触れるのも怖くて問い質せずにいた。

知っていた。
浮気が”フリ”だけだってこと。
学内で女とイチャつく姿を幾度も目にしていたが、女の子達が「陽介は誰とも寝ない」なんて話しているのも同じくらい耳にしていた。
何より、盗聴やゴミとしか思えないような俺の使用済み割り箸や吸殻なんかを採取しているらしいストーカー男が、他の女とどうこう・・・なんて鼻で笑ってしまう。
とは言え、ストーカーだろうが何だろう彼氏なわけだから、他の女とイチャつかれれば当たり前のように腹は立つ。
男と付き合っていることをカモフラージュしているつもりなんだろうか?
「陽介は誰とも寝ない。インポなのか変な性癖でも持ってるかもね」なんて影で言われていることを知っていたら、それが無意味なことだってわかるだろ?

(ストーカーとか浮気もどきとか・・・それでも別れなかった俺ってばすごいなぁ)

「・・・」
無言の陽介。
ただ強い光を湛えた灰茶の瞳を反らすことはせず、じっと篤をさぐるように見つめ返す。

「篤こそなんでわかんないの?」
「はぁ?!」
何を分かれと言うのか。
自分が常人には理解し難い行動をとっているという自覚がないらしい陽介は怒りを露にして篤を睨み、声を荒げた。
正しく逆切れ。
「俺はこんなに篤が好きで好きで好きで、篤だけ愛してるのに!」
切れながら愛の告白などされても、その開き直りともとれる行動に呆れることしかできない。
「まぁ、ストーカーだしな。歪んでるけど、愛みたいなもんかもな」
呆れ混じりにそう返すと灰色の眼光が一層鋭くなる。

「俺はお前だけ愛してる。篤が居ればそれでいい
なのに篤は
他の男とイチャついてるし、女も居るような飲み会に平気で顔出すだろ」


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