「あーつーしっ」
語尾にハートマークでも付きそうな甘ったるい声に思わず後退りしようとする篤だが、昨夜の激しい行為の名残で身体が思うように動かない。

親の脛をかじって大学に通う身の二人だ。さすがに年末年始に実家に顔を出さないわけにもいかず、陽介は二泊三日、遠方に実家がある篤は一週間帰省していた。
バイトの都合もあり、十日振りの逢瀬に陽介が篤の身体を離そうとはせず、篤が気を失っても行為が中断されることはなかった。
結果、腰は痺れたように鈍く痛み、肛門は腫れて熱を持っていて異物感が消えない。
辛うじて陽介が内壁に残した精液を掻き出してくれたようだが、風呂で清めたわけではない。
奥深くから粘液が下りてくる錯覚か、気持ち悪いほど上機嫌の陽介への不信感か、篤が身を震わせる。
「なん、だよ・・・」
痛む喉で掠れた声を絞り出す。

「俺とお外でイチャイチャしたくない?」
「無理」
即答である。
目の前の絶倫色男のせいで今日の体調がすこぶる悪いから、という理由ではない。
今までにも何度もせがまれ、手を合わせて懇願されたこともあるが、いくら陽介の頼みであっても応えてやれることとやれないことがある。
篤は、狭い田舎で思春期の頃から、自分が男性にしか恋愛感情が持てないことに苦悩して生活してきた。
進学で都会に出てきたからといって、急にカムアウトしたりオープンに同性同士の恋愛を楽しめるわけがない。
まして、陽介との付き合いが真剣であるからこそ、好奇の目に晒されることに耐えられそうになかった。

「無理しなくていいって!イチャイチャしたいだろう?そうだろ?
大丈夫!俺に任せなさい」
「はぁ?!」
いつも以上に能天気でハイテンションな陽介に、昨日の過ぎる行為への不満も相まって応答が刺々しいものになる。
「じゃーん!」
チープな擬音と共に陽介が紙袋を掲げた。
黒い光沢紙に金の箔押しで、疎い篤でも知っているレディースファッションブランドの名前が刻まれている大振りの紙袋。
名前だけは知っているとはいえ、篤にも、おそらく陽介にも縁はないはずだ。
いや、過去女遊びが激しかったという陽介なら、元カノだかセフレだかへのプレゼントに利用したことがあるかもしれない。
そう考え、知らず篤の眉間が険しくなる。
「実家でさ、高校ン時の文化祭で使ったヤツを見つけたんだ」
篤の表情の変化を気にも留めず、能天気な陽介はベッドの上で紙袋を逆さまにした。


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