一緒に居る時のさりげない気遣いやセックスのテクニックで女性経験が豊富なことはわかっている。
それなのに、巧みなキスからは想像できない稚拙な恋愛スキル。
いつだったか『自分から告白するくらい好きになったのは、篤が初めて』なんて甘い言葉を囁かれた。
真偽はわからないが、顔がいいだけに言い寄られるばかりの、受け身の恋愛経験がほとんどなのかもしれない。

不器用すぎる目の前の男に、なぜだか愛しさを感じて、思わず陽介の滲んだ目元に吸いよせられた。
少しだけ踵を浮かせ、僅かに高い目元に唇を寄せて啄む。
塩気を感じるほどもない微量のはずなのに、甘い味わいが口中に広がった。

「あつ、し・・・?」
驚いて視線を向けてきた陽介の瞳は、戸惑いで揺れている。
「・・・ホント、どうしようもない馬鹿男だよな・・・」
呟く口元に浮かんだ歪な笑みをどう解釈したのか、陽介の指が強い力で篤のシャツを握る。

「わ…わか、別れるつもりなんて、ないから!」
「あぁ…お前みたいなどうしようもない馬鹿男、野放しにしておくわけにはいかないからな」

───ホント馬鹿。

 俺の馬鹿。
 馬鹿馬鹿ばかばか
 こんな顔とセックステクくらいしか取り柄のない、上辺だけの稚拙な男が好きで仕方ないなんて。
 試すつもりか困らせるつもりか、
時折、異常とも言える執着を見せるこの男が、気まぐれに切り出した別れの言葉に頷いて、とっとと帰ってりゃ良かったのに。

───あぁ、でも、コイツに別れる気がないのを知っていたように、俺自身の気持ちも…

「篤!」
現金な男は、先ほどまで浮かべていた哀しげな顔をどこへやったのか、輝くような笑顔で篤の腰に指を滑らせた。
逞しい陽介の腕に甘く強く抱き締められ、真摯な眼差しが篤の瞳をのぞきこむのに少しの息苦しさを感じる。
「お前のこと、もう離したりできないから」
ずっと傍に居て───
声にならない呟きを篤の唇に吹き込んで、そのまま薄い唇を蹂躙する。
舐めて甘噛みして啄み、陽介は技巧を尽くして薄い唇が紅く色づいてふっくりと膨らむのを楽しむ。
篤の指が陽介の広い背中をきつく掴むのは息苦しさばかりではない。


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