お久しぶりです。
2012/11/07 00:42
勝が一に手をあげた。
今までそんな事は一度もなかったから、動揺しなかったと言ったら嘘になる。
座り込んで一心不乱に謝り続ける一を見るのは、廣明にとって苦痛にしかならなかった。
「一、大丈夫だから」
「ごめんなさいごめんなさい…っもうしないから…っ!」
耳を塞いで体を震わせる弟を抱きしめると、びくりと肩が動いた。
勝の方へ顔を向ければ、困惑したような、それでいて睨みつけるような表情で、こちらをじっと見ている。
思わず、一を抱きしめる手に力が入った。
涙を流し嗚咽を漏らす彼は、今まで見てきたどの一より、ずっと脆く感じた。
『護らなきゃ』。
廣明の本能がそう告げる。
「何よ…謝ったって許さないんだから!」
「勝!…頼むから、もうやめてくれ」
廣明の言葉に勝の動きが止まった。
まるで、自分が何をしているか理解してるようで。
気の所為なのか、泣きそうになっているようにも見えた。
「ごめんな、一」
「違う…っ、兄さんは、悪くな…」
もう一度強く抱きしめると、一の心が解される気がした。
そう、気がしただけ。
それが完全な自己満足でも、護ってあげたかったのだ。
たった一人の、大切な弟を。
自己満だっていいじゃない。
それが本心なら。
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