Lets cooking!


「パイ投げしたい」

なまえが言うことは、いつも唐突だった。
有言実行という言葉がよく似合う。
ある日はスキーをしたいと言い、探さないでくださいという置き手紙を置き、北海道へ行った。
そのまたある日はサーターアンダギーとゴーヤチャンプルーが食べたいと言って、一週間沖縄に行った。
キッドは、まさかパイ生地の材料から作ってしまうのではないかと、苦笑をする。

「なので、1年前からコツコツ作っていた材料で作ることにする」

あ、準備してたのね。
調理室行ってくる、と言ってなまえは廊下を駆け出す。因みに今は授業中である。先生可哀想だな、と同じ教室の生徒は思いながらなまえに手を振った。

二時間後に教室に帰ってきたなまえは、チョコまみれだった。全身チョコの匂いがして、夏だったら蟻に群がられたら大変だろう、とキッドは思う。
なまえが他のクラスから野球部を集めてチョコケーキ投げ大会をしたと言った。

「え、パイ投げじゃなかったの?」
「今日はバレンタインだから、特別。
来年はちゃんとしたパイ投げする」

手についたチョコレートを舐めながら、なまえは笑った。キッドは呆れながら、濡らしたタオルでなまえの頭を拭いた。

「キッド、食べる?」

なまえがチョコレートまみれの手を差しながら言うと、キッドは乾いた笑みを溢して、首を横に振った。

[ 3/27 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -