これは、なまえが神龍寺高校に来た初日のことだ。


最悪だ。
なまえは頭を抱えて唸った。
折角、花の高校二年の生活が始まるというのに、キュンキュンしてしまうような青春が始まるはずだというのに。
なのに、なんでこんな階段がクソ長い、寺みたいな男子高校の前に立っているのだろう。
なまえは泣きたくなるのを堪え、神龍寺高校の校舎へと入って行く。
周りを見渡すと、男、男、男、男。
むさ苦しいったらありゃしない。
逃げ込むように職員室へと入る。

「失礼します。今日から編入するみょうじです」
「おお、来たか!」
「武兄……来てもうたわ」
「まあそんな落ち込むな。ちょうど今からホームルーム始めるから、一緒に教室に行こうか」
「はあ……」

武兄、と呼ばれた教師、武川となまえは廊下をノロノロと歩いていた。
随分と古風な高校である。
上履きを履いておらず、生徒、教師共に道着と足袋を着用していた。
頭を丸坊主にしている人も多くいる。
恐ろしい高校だな、となまえは身震いをする。

「制服は巫女服と道着あるけど、どっちがいい?」
「道着一択やね」
「言うと思った」

なまえが即答すると、武川は苦笑した。
男子校で可愛らしい姿をするなんて、自殺行為に等しい。襲って下さいと言っているようなものではないか。
私はそんな飢えていないとなまえは言う。
腰まであった髪をバッサリと切り、極限まで女子っぽさを無くしたなまえはガックリとうな垂れた。

武川がガラリと教室のとびらを開いた。

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