目が覚めたときはすごく幸せだった。どうしてなんて聞かないでほしい。だって名前も知らないあの子に会えるのなんて夢のなかでくらいなのだから。そう、だから自分の目から涙が出ていても仕方、ない。懐かしくて懐かしくて、寂しくて。
中学生にもなって、なんて苦笑したけれど許してほしい。

涙を拭いベッドから起き上がる。支度をするために洗面台にむかえば案の定、赤くなった目元にまた苦笑して、着慣れた制服をまとうために部屋へと戻る。
《普通の》中学生らしくお洒落や身だしなみなんてものにも気を使って、髪やらなんやらセット。もうそのまま出れる、という格好にしたところでリビングに入る。
朝食はトーストに目玉焼き、男子中学生が作る食事なんてこんなものだ。いただきます、もごちそうさまもひとりむなしく響く家。もう見なれた誰もいない家を出て、ふと、思いついて後ろを振り返る。日本にありふれた一軒家、自分ひとりでは広すぎる家をぼんやりと見つめる。



「…………そろそろ、息子放っておかんで帰ってくるもんやろ…」


考古学者、なんていう世界を飛び回って息子をひとり置いていくような職についている両親にまた苦笑するけれど、きっとこれでいいのだ。
だってそんな身近に、"人間"がいたら殺してしまう



そんなの、考えなくともわかること、でしょう?





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