「丸、何を遊んでおる?」
「の、信長さま!蘭丸は怪しいやつを見つけました!」
「怪しいやつ……?そこの、娘か」
「そうです!変な格好で、どこの人間かもわからないんですが…多分あの宗教団体の刺客だと思ってます!」
「だーかーられむは関係ないって言ってますよ!れむは匂宮以外に所属する気はないです。それにいまは誰にも依頼を受けてませんから刺客でもないのです。依頼されたら誰でも殺しますが、おにーちゃんじゃないんですから依頼されなきゃ誰も殺しませんのです!穴に落ちたらこんなところにいて、変な集団に間違われて、もう嫌になっちゃいます!!」

れむは早くもう帰って、おにーちゃんとおねーちゃんと遊びたいんです。こんなところに用はないんです。あれ?だけど。どうやって帰ればいいんですか?
あんな狭い穴、マジカルバナナでは登っていけません。地道に登るのだって無理です。――帰れない?
気づかなくていいことにれむは気づいてしまいました。夢からさめるなんて、さっき打った体の痛みが現実だって伝えてるから、ありえません。じわり、と目がうるんできました。涙です。蘭丸とかいう男の子がぎょっとしたようにれむを見てきます。でも、止められません。


「う、うわああ……うわあああん!!」
「!? な、なんで泣くんだよ?!信長さま!蘭丸はなんにもしていませんよね!」
「……家に、いえに…かえれ、ないよお……うわああん!!」
「はあ!?さっきから意味わかんないだろ!!蘭丸にもわかるように言えよ!」
「ひっく……いえに、おにーちゃ、んたちのとこに…かえ…れない……かえりかたがわ、からな……んです……!!」


止めようと思っても涙は止まってくれません。こんなに泣いたのだって久しぶりなんです。
くしゃくしゃのぶっさいくに顔を歪めて、れむは泣き続けます。すると、ぽん、と頭に手が置かれました。


「……娘、名はなんという?」
「に、おうの宮……恋夢です、よ……」
「匂宮……源氏物語か。だが聞かぬ名だ。ならば予が連れ帰ってもなんの問題もあるまい。――着いてくるか?」
「信長さま?!」
「くく…幼い者の力は計りしれぬのだ。そなたも同じだ、丸」
「……行く、れむを、連れて行ってください。ひとりは、こわいのです」
「くはははは!良い子だな!」

いつの間にか、涙はいなくなっていたのです。









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