「さあて、せっかくいろは誘拐したんだから、面白いことしてやろうぜ。一姫、曲識用意だ。いろははあたしらの名前、呼ぶんじゃねーぞ!」
「はいですよ!」
「手伝いというのも……悪くない、」


そう言ってシニカルに笑う潤さんに、ぼくは嫌な予感しかしなかった(だってぼくになにができるのか!)















「あたしの調査によると、いろはおねーさんはあたしたちと別れたあとすぐに帰ろうとしてたんだね!校門を出るところまでは見た人がいっぱいいるみたいだよ!」
「風紀委員からの報告も似たようなものだね。その先の情報が入ってこないな」


並盛が誇る?ふたりの情報によると、確かに昨日いろはちゃんは学校からは出たようだ。ただ――その先の情報がどうしても掴めない。それってあり得ることなのか……?


「……もしかしたら、空間製作とか使われちまったかもなー…」
「空間製作…?それってなに出夢くん」
「僕の昔の仲間が使ってた技術なんだけどさあ、誰かひとり気づかれないように攫うぐらいなら簡単に出来るぜえー?」
「木の実さんって言うんだねっ!」
「まあでも、あの人がおねーさん攫う理由とかないし……違うかな」
「そう…。じゃあ引き続きこっちで校内の聞き込みはしてあげるよ」
「あ、はいお願いします!」


そう言って雲雀さんが屋上から出ていこうとしたとき〜♪〜♪♪とあのオレたちがお馴染みのメロディーと「緑たなびく並盛の大なく小なく並がいい」というフレーズが聞こえてきた。もしかしなくとも、雲雀さんの携帯だ。隣で人識くんが「うわ……!」と引いた声がした、オレも最初はびびったよ。状況が大変だったから突っ込まなかったけどさ。「非通知…」と雲雀さんが呟いて電話に出る。いつの間にかみんなそんな雲雀さんの様子を静かに見つめていた。



「………きみだれ?――は?誘、拐犯……?」
「えっ!!?」


まさかの誘拐犯からの連絡?!っていうかそれってやっぱり……!?
リボーンと雲雀さんが目配せをして、雲雀さんがそのまま携帯の音量を上げてオレたちにもその声が聞こえるようにした。

〈もう一度言うが、井伊いろはは預かったぜ?〉
「君は、何者なの?」
〈まあまあ焦るなって!そんなのは後からいくらっでも、嫌というほどわかるからさ。とりあえずえーっと要求な、いろはを返して欲しければお前らみんなで取り返しにきな。いまはまだ、いろはちゃんは無事だからなー〉


落ち着いた男の人の声…?よくあるほら、ヘリウムガスとかで声を変えてるとか機械を使っているってことはない、自然な声だった。少なくともオレは聞いたことがない。だけどオレの直感が訴えていた、この声は、本当の声じゃないんだって。だってそもそも口調と合ってなくない?


「……あの子の声を聞かせてもらえるかい?」
〈なんだよ、疑り深いなー。ま、当たり前か。いいぜ、ちょっと待ってな…………………はい、いろはちゃんこれに一発メッセージ。―――え?あ、はい?いきなりですか………〉
「いろはちゃん!よかった……!」

声を聞く限り無事そう。知らずに安心して息を吐いてしまった。だけど、雲雀さんとか人識くんとか、あと獄寺くんも同じみたいだった。次の瞬間までは。

〈えっと……っ!!?ちょっひ、…ちゃ………うわぁあああ、ちょ、やめ……!どこ触って……(びりっ)……うう…〉
「いろはちゃんー!!?ちょっ一体なにが………」
「ちょっとなにやってるんだい!?」
〈おーごめんごめん、だけど手荒なことはしてねーから安心しな。どっちかっつーとドキドキが待ってんぜ〉
「テメーざけんなっ!!」


ぴきりと隣で人識くんと出夢くんが青筋を立てて殺気を漏らしているのが、恐ろしい。いまにも、どっかにつかみかかって行きそうだ。獄寺くんなんて雲雀さんの近くに行って叫んでいる。てか顔赤いよ、獄寺くん。みんな雰囲気怖いから。いやオレだって心配してるけど、直感がさっきから平気だって伝えてるんだよ。(なんで?)ああもう、この暴走しそうな人たちをまとめて連れていけるかな。

〈…ま、この通りまだ無事だ。だけどこれからどーなるかなーさっきみたいなことにどんどんなっちゃうかもなー。てことでお姫さまを助けたいならさっさと来な。場所は…………〉



告げられた場所は遠くない、みんなで顔を見合わせて頷きあった。













「よっし、うまくいったなー!いーたんのさっきの声であいつら今頃青筋おったててるんじゃねーの?ははっ」


「かーわいいー!見せてやりたかったよもう」と、電話をぱちんと折りたたみながら潤さんはこちらを見てニヒルに笑う。そう、いまのぼくの状況は。


「わー!師匠懐かしいですね!澄百合の制服っ!!」
「うん、悪くないな」
「あ、はは……だけどふたり、いきなり脱がすのは止めて欲しかったな」


だっていまぼく女の子だしってのは戯言?
潤さんはお得意の声帯模写で、恐らく狐さんらしき声で電話をかけた。口調は潤さんだから、ものすごく気持ち悪かったけどね。てかこれ出夢くんとか理澄ちゃんとかにバレたんじゃないのか?そのまま電話がつながっている状況でお察しの通り、いきなり制服を脱がされました。そして姫ちゃんが着ていたのと同じ、澄百合学園の制服に着替えさせられた。ご丁寧にヘアバンドまでつけてね。インナーとかちゃんと着てたし、やっぱりぼくはまだ《ぼく》だったときの感覚があったから平気だけど本当なら訴えられても仕方ないと思いますよ?


「ま、囚われのお姫さまってのはいつでもそういうシーンがあるもんだろ!」
「また潤さんの好きな王道って奴ですか…」
「そうだよ。だからこれからお姫さまを助けに来るのは王子さまってわけじゃん?だったらあたしらは魔王、盛り上げないとな!なあ?」
「はいです!それに姫ちゃんとしてはこっちの制服のほうが師匠に似合ってると思うのですよ!」
「盛り上げとかよくわからないけれど、僕は潤のためになら、魔王にだってなるのも悪くない。人識もいるが、軽く戦うぐらいならやるさ」
「さっすがあたしの曲識じゃん!愛してんぜっ」
「それは、すごく嬉しい……」
「おいおいあたしにだけ言わせておいてあんたは言わないのかよ?」
「潤、僕だってもちろん………あ、愛してる……」
「はいはーい、おふたりいちゃつくなら別室に行ってくださいねー!姫ちゃんは師匠とふたりラブラブしていますからっね、師匠!」
「ああうん……もう好きにして」













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