グリーンくんと別れてぼくはヤマブキシティに向かう。目的はもちろんリニアに乗るためだ、ジョウトにはリニアでひとっ飛び。スタートがコガネシティからってちょっと間違えてる気がするけどそこは仕方ないじゃない、と自分に言い訳してみる。て、ああ間違えた!スタートはシロガネ山だった。スタートがラスボスからってこれも間違い、間違えだらけだねぼくの旅は。だけど、絶対世界を見て、自分の力でシロガネ山にはいれるぐらいにまでなるんだから。レッドくんとバトルっていうのも楽しそうじゃない?いままで本気でバトルしてもらったことがないから、にひ、すごく楽しみだなあ。
ヤマブキまでちょっと歩こうとハナダ寄りのゲートの近くから、リオルを連れ歩き状態でいると、けっこう勝負を挑まれる。まあ大抵は瞬殺だけど、ぼくのリオルはそこんじょの奴らとは違うよ。ドラゴンボールでかめはめ波もとい、波動弾で一発なのさ。ああそういえば、ハナダといえばカスミちゃんにあとで連絡をいれておかないと怒られちゃうね、なんで黙っていっちゃうのよ!!ってね。かわいいかわいいぼくの友達を怒らせるのは得策ではないなあ……ん?んん?あれは……?
すごくすごく見慣れた赤い後ろ姿、だけどいつも見ている背中とはちょっと違っていて。だけどぼくの知り合いであることには間違えないみたいだ。黄色いパートナーを肩に乗せた彼に気づかれないように、気配をなるべく消して近づく。


「…………わあっ!!」
「!!?! な、ななななんだーっ!!?」
「あはははっ!驚いた、やったー!」
「あ、あんた………ミオ、さん……」
「んー?ミオでいいよう。無理してる感に溢れてるからねえ」
「………あんたなにしてんだ。は!れ、レッド兄さん、いんのか!?」
「ざーんねん。レッドくんはお留守番だよー、ファイアくん」
「ふ、ふん……ならあんたに用はない。じゃあ…ぐえっ!!」
「ちょっと待ってよー。どこに行くのかぐらい教えてくれたっていいじゃんか。てかヤマブキ?ヤマブキに行くのかな?」
「……だったらなんだよ、」
「わあ、偶然!なら一緒に行こうよ、ぼくもリニアに乗るんだー」


そう、ファイアくん。赤い帽子と黄色いピカチュウの組み合わせがわかれたばっかりの誰かさんを思い出すけれど、気にしないふりふり。知らないよ、おんなじ赤い目の男の子のことなんて。
にこにこしながら、ファイアくんに提案するとあからさまにファイアくんは嫌な顔をしてみせた。


「……アンタと?」
「うん、すぐそこまでだしいいじゃない。どうせこのまま別に行ってもおんなじだし視界にはいって気まずいし、だったら最初から一緒に行ったほうがいいでしょ?」
「……まあ、そうだな。だけど余計なバトルとかするなよ、そんときは置いていくから」
「うん!」


ぷいと顔を背けて歩き出すファイアくんに少し駆け足でついていく。年下だけど、身長はそう変わらないからやっぱり男の子ははやいや。だけど、バトルをすれば置いていく、つまりしなければ置いていかないって言ってくれてるあたり甘い、年下の男の子だ。ぼくだって一応女の子だからか頭ごなしに拒否しないし。
そんな様子をくすくすと頭の上に乗るリオルと笑いあったら、ファイアくんの肩に乗るピカチュウはこっちに興味があるのかちらちらことこちらを見てくる。手を振ったら慌ててぷいとそっぽを向いたけど、わかるよ。まだまだこっちに興味があるみたいだ。というかやっぱりご主人さまそっくりだよね、ぷいとする仕草がおんなじだ。


「ねえねえ、ファイアくん」
「なんだよ」
「ぼくのリオルと、ファイアくんのピカチュウでちょっと遊ばせながら歩けないかな?りーくんがファイアくんのピカチュウに興味があるみたいなんだ」
「…………」


本当は気にしてるのはピカチュウのほうなんだけど、そこはさすがぼくのリオル!空気を読める子だからぼくの言葉を否定なんかしない。それにリオルだって遊びたいのは本当だもの。
ファイアくんもピカチュウの様子に気づいていたのか、少し考える仕種をしてからひとつ頷いた。


「いいよ。ピカチュウも遊びたいみたいだし、リオルはアンタと違っていい子そうだしね。ピカチュウ、行っておいで?」
「…ぼくだって、いい子にしてますよーう」
「だってアンタって悪いこととか大好きだろう?まあ悪いっていっても軽いイタズラとかだけど」
「そんなことないし。やったことがたまたま悪いことだったりするだけだもん」
「どーだか」


正解。しっかしよくわかってるねえファイアくんたら。そういうの見抜くの得意なのかもねえ、ポケモンも人間も。
太陽の光を目一杯浴びながら、きゃあきゃあともう馴染んで、楽しそうにまわりを駆け回ったり、草むらで転げ回る2匹に頬を緩ませるファイアくんを見て、ぼくもにひ、といつもみたいに笑った。



間違いだらけのスタートは
(どうにか切られて、走りはじめました)






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