「ここね、あなたの部屋は。
改めまして!私は孫尚香よ」
「私は星彩」
「本多忠勝が娘、稲と申します!」


ぼくだというなかなかいいんじゃないかっていう部屋に落ち着くと、三人の女の子はそれぞれぼくに名乗ってきた。


「尚香さんに星彩さんに稲さんですね。ぼくはミオと申します。今回はありがとうございます」
「ねえ、敬語止めない??私たち2、3歳しか変わらないでしょうし!さん付けもなんかじれったいもの!」
「……じゃあ尚香ちゃん、星彩ちゃん、稲ちゃん、かな?」
「ええ、それでいいわ」
「さ、最初は慣れないと思うけど勘弁してくだ、………ね」
「大丈夫ですよ。尚香が押したんです、慣れるまで待ちます」
「ありがとうございま…あ」
「あははは!あーあ!」


やっぱり劉備さまの人徳なのかな。
みんなやさしいや。ひとりきりで不安だったけど、ここでもやってける気がする。



「あのねそういえばみんなはいくつなのかな?戦場で…戦ってるんでしょ?」
「あたしたちは17とかそのへんねえ」
「まあみんなミオよりは上なのは確かね」
「ん?でも昔の成人……元服って12、3のころでしょう。だったらぼくぐらいの子だってわんさかいるんじゃないの?」
「普通、女子で12、3で戦にでるなどありませんよ。せめて15くらいからです」
「ふーん、じゃあちょうどいいんだ。ぼくも15くらいだし」
「えっ」
「え…………?」
「あらごめんミオ、あたし12くらいだと思ってたわ」
「…………うん、いいよ。慣れてる」


……知ってたよ、ぼくがちょっと、あくまでちょーっと年よりも下に見えるなんてことは。
これはぼくだけじゃなくて、双子の兄である少年も悩んでいること。母のアルバムを見ると、中学生からしばらく。そしていまも20代前半、つまりぼくたちの姉にしか見えないほど若く見えるし変わっていない。一時期は妖怪なんじゃないかとまで疑った。そしてなにより恐ろしいのは、その血が明らかにぼくたちふたりに受け継がれているということで。
ぼくは、まだいい。けれど兄はつい数年前まではぼくと同じくらいの身長、つまり人よりも小柄(まわりが大きいのもあるけど)な体、いつまでも少女少女した母に似たかわいらしいとまで言える女顔、きっと成人したときに年齢確認をされるのだろうと思われるぼくたちの成長ぶり。
……ここ数年は、マフィアとかなんだとかで自分よりよっぽど大人びた顔をするようになったのが気に入らないけど、それでもあの遺伝子には勝てやしない。
いっそ、この身に流れる最高血統よりも優性なんじゃないかと思います。


「遠い目ね………」
「…………大丈夫?」「ああうん、ちょっと嫌なことを思い出してただけだから」
「(触れないでおこう)」
「そ、それより…そうだ!ミオはどうして太公望殿と?」
「あ、えっとねえ……」

とりあえず自分のいたところから気づいたら草原にいて、歩いていたら戦場について望ちゃんに拾われたと説明。運がよかった、というか超直感があったからここまでこれたんだといまさらながらにぞっとした。
じゃなければ、現代日本で生まれ育ったただの子どもが生き残っているはずもない。


「……ミオのいたところはどんなところなんです??」
「んー、日本……っていう国で、多分稲ちゃんから見たら未来の世界かな。こんな風に戦ったりがない平和で戦争がないところ、かな。少なくとも戦場を見たのははじめて」
「稲の未来………それが殿が築き上げた世界ならば、幸せですが」
「世界なんていくつにもわかれちゃってるんだよう。平行世界っていう考え方なんだけどね。だから稲ちゃんの未来ってのは間違えかもしんないけど、数百年もしたら平和なのは確か、かなー」
「あんた難しいこと言ってんのね。よくわかんないけどあんたが平和なとこからきたってのはわかったわ」
「だけど、ならなんで呼ばれたのかしら」
「さあ………?」



平和だっていっても、表向きの話でつーくんたちはゴタゴタとやってるんだけどね。それにだったら、つーくんとかザンザスお兄ちゃんを呼んだほうがこの世界のためだろうし。
ま、考えてもしかないことは考えない。



いまはわいわいとおしゃべりをする三人に混ざろうか。





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