これがドッキリでないことはわかった。
夢じゃないこともはっきりしている。ついでに意識もはっきり、霧の守護者おとくいの幻覚でもない。
もしかしたら、これが噂のトリップというやつなのかもしれない。
いや、たしかにそういうの、好きだけど。きゃーきゃー騒いだり、つーくんたちには見せれない本もってたり、そーうけ、期待してたけどさあ。


「べつにふまんがあったわけじゃないのにね」

なんでぼくがきちゃったの?どこをどうしてえらばれた?

まあ悩んでても仕方ないから、とりあえず歩こうか持ち物は、ケータイと学校用のショルダーにはいってる財布にコスメもろもろ。お気に入りのスパナは手にもったままだったし、どーしてか手放せない銀食器に拳銃と弾……はリボちゃんの仕業か。

あ、おやつに飴みっけ。ぶどう味だったからきっとらんちゃんの。ちょっと元気でたかも。ごめんね、帰ったら新しいの買ってあげるから。


「んーと、こっちかな。」

遠いマフィアのご先祖さまから受け継いだらしい超直感とやら、まあつまりはただのすごいカンにしたがって右にすることに。


「びーんご」




一時間ぐらいしたら、煙が見えてきた。歩きなれない土地をローファーで歩いたからいろんなドラマが途中生まれたけどそこは割愛。疲れてたけど、また元気が出てきたため早歩き。だけど、あれ、れ?様子がおかしいや!
目の前にはせわしなく動くひと。
そして……倒れてるひと、ひと、ひと。
血を流していたり、矢が刺さっていたりするひともいるけれど、超直感とやらを使わなくたってわかる、あれは、死んでる。

あきらかに人間じゃないのだって死んだり、戦ったり………戦い?
そう、まるで戦争。だけど人間と鬼の戦争なんて聞いたことがない。
だけど、どーしてだろう。こんな現実味のない光景を当たり前と受け入れられる自分がいる。
どーして?ボンゴレの血のおかげ?それとも、もっと、《むかし》



「ん、おい!」
「……………あ、…ああ」


(こっちをむかないで!)


「人間の女がいるぞ!それもかなりの上玉だ!」
「逃げ遅れか〜、かわいそうにな」
「遠呂智さまや董卓さまへの献上品としてちょうどいい」
「や、やだっ…くるな!!」
「き、ひひ………」


そうやって笑うな。ちがう、それは《あいつ》の笑いかただよ。
ええと、ちがう。そんなこと思ってる場合でも、ない。助けて………つーくん!リボちゃん!



だけどもうだめだ、と目をぎゅっと閉じる。いつの間にか手はバッグのなかの銀食器(シルバー)とスパナに伸びていて。そんなのじゃあ意味ないとどこか冷静になった頭で考える。あれ?なんでだろう。いつまでもこない衝撃。そのかわりひゅんっとした音が聞こえた。


「え……?」
「なぜこのようなところにいるのだ、人の子よ」
「…………男の、子?」



周りにいた鬼が一人残らず倒されていて、その代わりに目の前にいたのは釣り竿みたいのを持った銀色の男の子。ぼくと同じくらいかすこしうえぐらいにしか見えないその人が、…助けてくれた?




「子ども扱いをしてもらっては困るな、人の子よ。私は仙人だ、こうみえてそなたよりもずいぶんと長く生きている」
「せん、にん……あ……………」


直感が訴えてくる、この人は大丈夫って。そうおもったら途端に涙があふれてきちゃった。


「な、なぜ泣く、人の子よ」
「だ、だってあ、んしん、して…」
「……安心するにはまだ早い、ここはまだ戦場であるのだから。さあ、ついてこい」


少し先の森らしいところへと連れていかれた。ここにはもうなにもいない。なんかもう制服が汚れるとかお構いなしに座りこんだ。そうして気づく、まだシルバーとスパナを握ったままだった。


「さて、泣き止んだか人の子よ。ならばそなたはなぜあのようなところにいた??見るからに戦場に立つ身ではあるまい」
「…………ミオです。仙人さま。人の子じゃない…ってわけじゃないけど、とりあえず名乗っておきます。ぼくはミオ、です」
「ほう、ならばミオとやら。私は太公望と呼ばれている」
「たいこうぼう……」

なんか聞いたことがある名前。
たしか封…神演義…だっけ?昔の中国のお話の。でもあれはおじいちゃんのお話だったと思う。目の前にいるのはとても綺麗な男の子。そう、



「きれい……」
「?、なにか言ったか??」
「ううん、なんでもない、です。ぼくが、なんであそこにいたか、ですよね。はっきり言ってわかりません。ぼくは学校帰りの空き地にいたはずなのに、いつの間にか草原に立ってて、それで、わけわかんないからせめて人のいるほうに歩いてきたら……さっきの状況でした」
「学校?
ふむ…そなたもまた多くの無双たちのようにこの世界にひっぱられたのだろう。見れば日の本の国の娘のようだが、服装が違うな…」
「ひのもの…日本以外の人もいるんだ…」


あ、おもわずタメ口。気にしていないみたいだけど、ぼくからすれば恩人だから粗そうがあったらいけないと思う。


「それはもちろん。ここは遠呂智という者がつくりし世界。時代も国も超えた強者たちが闊歩する場所なのだからな」



……………なんだか、マフィアとかよりももっと、とんでもないところにきちゃった感じ?
(まさかぼくが主人公みたい、な?!)












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