ベッドに沈み込む。明日から、諸葛亮さんのところで兵法を学ぶことになった。
ふつーの……、多分、普通女の子だったのに、今日1日ですごく変わっちゃったなー

「みんなに、つーくんに、会いたいなあ……」


ここのひとたちはみんな優しい。ここでやっていけるとも思った。けどさ、さすがに初日からいきなり馴染んで、平気でいられるほど大人でもなんでもないんだよう。
あーあ、つーくん今ごろ心配してるかなあ?
ごろりと仰向けになって上を見上げる。夜、寂しいときは、勝手につーくんのベッドに潜りこむのがいつもだったから、ベッドが広いとどうしたらいいかわからなくなる。ここ数年は散々心配かけられたんだから、心配させてやろうなんて思ってたけど、そういうの向いてないのかも。
なんてうつらうつらしていたら、いつの間にか眠っていて。



(おいで、おいで)
(ん……だあ、れ…?)
(さぁ。でもあなたは私たちのところにくるべきなんだから)
(……きみは……)


「目を覚まして、ミオ」
「へ、?だ、だれ?」


はっきりとした目をあけたら、周りは白を基調とした不思議な空間。
そして10歳くらいの綺麗な男の子。え、なにこれ。


「おはようミオ」
「おおおはようございます。あの、ぼくを知っているみたいだけどあなたは…?」
「わたし?わたしは白い龍。神と呼ばれることもあるけれど…白龍と呼んで。あなたをここに、そしてあの世界につれてきたのもわたし」
「きみ、が…?」
「うんそう。……あのね、ミオ。あなたにお願いがあって連れてきた。人にしたらずいぶんの昔、わたしの神子は…怨霊を浄化してくれた。平和へみんなと導いた。広がって、きっとまた悲しみが生まれてしまう」


龍、なんだ…。どうみても子どもにしか見えないんだけどなあ。なんて現実逃避。
子どもらしからぬ厳しい表情で白龍はぼくにいってくる。やだな、子どもがそんな表情をしちゃいけないよう。


「だからね、ミオには戦を終わらせてほしい。怨霊たちを浄化するのを手伝ってほしい。神子が、願った世界を取り戻すのを助けてほしいの。――だからとても勝手だけどあなたをこの創られた世界に連れてきた」
「と、いわれても、ぼくにはそんな力なんてないよ…つーくん、そうお兄ちゃんならまだしも、戦えなんてしないし」
「ううん、ミオは力を持っているよ。ただ忘れてるだけ。とっても面白い力。それに思い出したいって心の奥底は叫んでるから、ある意味わたしたちの利害は一致した。だけど、それだけじゃきっと乗り切れない。だから………、うたってミオ」
「――はい?うた?」


意味がわからないことばかりを言われて戸惑うぼくを、安心させるように微笑みながら白龍はいう。


「あなたの紡ぐ言葉には、ある意味力がある。ずうっとむかしに、教えてもらった、生き方。だからそれを思い出すまで、楽しかった思い出を想うようにうたって。それを合図にわたしも力をかすから。かわりにうたって。そしたらね鬼も、怨霊もみんな龍脈に還れる」
「うたうってなんでもいいの、かな?」
「うん。神子にしかお願い、できないんだ」
「う…………」

つくづくぼくは女の子や小さい子に弱いみたい。はあ、とため息をついてちいさな白い子どもに目線をあわせるように軽くしゃがむ。どんな、ファンタジーに巻き込まれてるんだよう。


「わかったよ。こういうのって了承しないと先に進めないのがRPGの基本なんだ。それに…ここまできたらやらないわけにはいかないでしょう。どうせ兵法を学ぶんだ、戦場にだって向かうよね」
「わあ…!ありがとう、ミオ!」
「どーいたしまして、白龍」

精一杯の笑顔を見せてくれた白龍。うん、子どもにはこっちのほうがあってる。くすくす笑ってると、白龍はなにやらぼくに小さな珠を渡してきた。

「あのね、これはまだミオには使えないかもしれない。だけどそのときになったらきっと応えてくれる」
「へーさっき言ってた力とやらに関係が……うげ、体のなかに、はいっちゃった……!?」

「大丈夫だよ?目にみえなくなっただけだから。わたしはそこにいけないから、代わりに」
「神さまなのに?」
「神だから。蛇に拒否されてしまうの」
「難しいんだねえ」
「うん。この世の理は、難しい。だけど蛇はただ破壊したいんじゃないんだよ。愛されたくて、どうしていいかわからなくて、そして最後に望んだのが滅び。だから、せめてあなただけは――」
「はく、りゅ…………あ!」



最後に見えたのはこの不思議な空間によく映える白い龍だった。


せめてあなただけは、愛してあげてください
それができなくても、憎まないで、ください










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