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「俺にとっちゃお前は、仕事抜きにしても大切な存在だ。お前の辛い過去も、先見えぬ未来も、これからは分かち合っていきたいと思ってる。相棒としてな」
「…僕のこと、何も知らないクセに、そんなの不可能ですよ」
「可能か、不可能かはやってみなきゃ分からないだろ。やる前から不可能なんて言うなよな」
「……」
まさかおじさんが自分に対して、そこまで考えてるなんて思ってもなくて…。少なからず僕は、面食らってしまった。
何時もはあんなにいい加減で、どうしようもない人なのに。こんな時に限ってそんなことを…。心を揺さ振るような言葉を言ってくるのだろう。
こんなの、狡い。狡過ぎる。
「…あ、もしかして、感動した?俺も上出来だと思ったんだよ」
「……全く、貴方という人は」
こうやって空気の読めない台詞さえ言わなければ、少しぐらいはこの人を尊敬出来ていたかもしれない。僅かでも見直した僕が馬鹿だった。
「その逆です。僕は、感動していたんじゃなくて、貴方に呆れていたんです」
「酷…っ。ま、いいや。とにかく、誕生日おめっとさん、バニーちゃん」
今一度ガシガシと乱暴に僕の頭を撫でると、おじさんは大きな紙袋を渡してきた。
「何ですか、これ…?」
「見て分からんの?これはおじさんからバニーちゃんへの、バースデープレゼント」
「………」
「…やっぱ、こんなおじさんからのバースデープレゼントなんて受け取れないか?」
たとえおじさんとて、そんな悲しげに言われては、無下に断ることもできない。
「べ、別に誰もそんなこと言ってないでしょ…っ」
半ば掻っ攫うように、僕はおじさんから包みを受け取った。
「か、勘違いしないで下さいよ。、貴方が可哀相だから、一応、貰っといてあげるだけですからね」
「…相変わらず、可愛いげのないヤツ」
小さくぼやいたけれど、でも、おじさんの顔は何処か嬉しそうだった。
僕はこの人の、こんな表情を、初めて見た気がする。顔を綻ばせた、本当に素敵な笑顔を。
そんな彼の表情を見て、不覚にもドキリと鼓動を高鳴らせてしまった。
「…そろそろ、あっちに行こうゼ、バニー。みんな、お前を待ってる」
「……えぇ」
「どうかしたか?」
「いえ、何でも…」
二、三歩進んで、不意に目の前に居るおじさんの背中に向かって、声を掛ける。
「あの…、おじさん」
「うん?」
「…今回は、色々と尽力下さり、有り難うございます。……それから、これからも宜しくお願いします」
面と向かって、相手に礼を言うのは何とも照れ臭い行為だったけど、柄にもなくこの胸は熱くなってしまった。喜びというものを深く感じてしまった。
「どう致しまして」
こちらに振り返り、再びニコリ笑って、おじさんはそっと僕の手を掴んでくる。
最初は何事かと思ったけれど。手の平を通じてじんわりと伝わる温もりに、僕の心はどうしようもなく、震える。微かな温もりは僕の身体中を満たしていく。
しっかりとその手を握りしめられたまま。
僕はみんなの待つリビングへと、おじさんと共に向かったのだった。
君の生まれた日
「ところで、先程おじさんがくれたプレゼントの中身って、一体、何なんですか?」
「それは開けてからのお楽しみ、ってヤツだな」
「……何か、嫌な予感がプンプンするのは、ただの気のせいなのでしょうか?」
「あぁ、気のせい、気のせい」
HAPPY BIRTHDAY DEAR BARNABY!!
(20111030)
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