「あの、…僕、今日のこと全然知らされて無くて、と言うか。まさか祝って貰えるなんて思ってなかったので、何の支度もしてないんですが…」
「その心配は要らないわ。ワイルドタイガーから前以て、色々と用意して来いって、言われてたから」
「とりあえず、バースデーケーキとフライドチキンと飲み物なんかは、僕たちで準備して来たよ」

ドラゴンキッドはそう言うと、両手の荷物をひょいと持ち上げて、自慢げに中身を見せびらかす。
言われてみれば、先程から、香ばしくも良い匂いがすると思ったら。

「ケーキはね、この子たちのお手製なのよ」
「それで、こっちのフライドチキンは近くのファーストフードで購入」
「私はこれも手作りにしろって、この子たちに言ったんだけどね、あっさりと却下されてちゃって」
「だってそれはファイヤーエンブレムが、あれこれと私たちの邪魔をするから、他の物を作る時間が無くなってしまったんじゃないの」
「アレは邪魔じゃ無くて、助言よ、助言」
「僕にはそういう風には、聞こえなかったけど」
「そうよ。口だけ出して、全然、手伝ってくれないし」
「昔から言うじゃない、男子厨房に入る可からずって」
「都合が悪い時だけ男ぶるのは狡い」
「なんですって」
「………」

あぁ、また始まってしまった。堪らず、僕は嘆息を漏らす。
三人は、時々、ホンの些細なことで、こうやっていさかいを起こすことがある。
本当、仲が良いんだか、悪いんだか…。
此処は玄関前だし、大声出したりしたら近所迷惑だろうし。このまま三人を野放しにしておくと長くなりそうな勢いだったので、透かさず僕が仲裁に入る。

「あの、ちょっと宜しいですか?」

…正直、こういうことが1番、苦手なんだけど。

「こんなところで立ち話も何ですから、どうぞ、中に入って下さい」
「…あら、ごめんなさいね、ハンサム」
「いえ…。さあ、どうぞ」

僕がそう促せば、話を中断して、お邪魔します、と言いながら、三人は家に上がり込んだ。今までにも何度か来ていることもあり、勝手知ったる、といった感じで、気軽にリビングへグラスや皿を運び始める。
余り使用していないテーブルも、奥から引っ張り出してきた。
一応の体裁が調ったところで絨毯の上に腰を下ろした。
それからブルーローズが、グラスに飲み物を注ぐ。
並べられたグラスの数は、全部で9個。
グラスが一つ余分じゃないだろうか?

「…グラスの数、一つ多くないですか?」

今来てくれているファイヤーエンブレム、ブルーローズと、ドラゴンキッド。それから、スカイハイさん、ロックバイソンさんに折紙先輩。あと、おじさんと僕。グラスは8個あれば事足りるはずなのに。

「いえ、これで合っているのよ」

きっぱりとファイヤーエンブレムが言い切る。

「え…?」
「僕たちだけじゃ役不足だとタイガーさんが言って、バーナビーさんの会社の斎藤さんっていう人にも声を掛けたみたい」
「斎藤さん…を?」
「本当はもっと沢山の人にタイガーが声掛けたんだけど、都合がつかなくて…。だから、グラスは9個で丁度良いのよ」
「…でも、どうして…?」
「どうしてって…。そりゃ、アンタの誕生日なんだから、沢山の人が集まった方がアンタだって嬉しいでしょ?だからよ」


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