prologue


別に忘れていた訳じゃないし、特に特別なことだと感じたこともない。まして、誰かに祝って貰いたいと思ったことも、今まで一度だってなかった。
だって、この世に生きる、全ての生きとし生けるものには、誰にだって訪れるだろうこの日が、自分にもやってきただけのことだから。


――それでも…。


こうやって、面と向かって「おめでとう」と言われるのは、何だか擽ったくて、照れ臭くて、そして、何処か気恥ずかしくて…。決して悪い気持ちにはならない、ということを。
大切な誰かに出会うまで僕は、ずっと知らなかったのかもしれない。


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