普通科の校舎の屋上。その手摺りのある場所に、奥村君はいつも立っている。
ぼんやりと空を見上げながら。時々、鼻歌を歌いながら。祓魔塾のある日と、雨の日以外は必ずと言って良いほど。

「奥村君、空を眺めるのが、そんなに好きなん?」

随分と前に、俺はそんなことを奥村君に尋ねたことがあった。

「奥村君って、もっと外で遊んだり、友達と騒いだりするのが好きやと思っとったんやけど…」

まぁ、確かにな。そう言って、奥村君は言葉を続ける。

「空って果てしなくて、好きなんだ、俺。掴めそうで掴めない、そんなトコ、何だか夢に似てねぇ?」

あはは、全然柄じゃねぇけどな、奥村君は白い歯を見せ、無邪気に笑ってみせた。
それから、ふわりと視線を大空へと向け、ただ静かに空を流れて行く雲を、追い掛ける。
こんな、何の変哲もない空を眺めるのが好きだなんて…。何だか至極意外な気がしてならなかった。
だって、大人しく空を見上げる奥村君なんて、微塵も想像出来なかったから。
最初のうちは、空に惹かれる奥村君を理解出来なかったけれど。彼に付き合って屋上にやって来るようになってから、何時しか、そうやって空を眺める奥村君の横顔が好きになっていた。そして、奥村君のその全てに、強い恋情を抱くようになっていた。

――そして俺は奥村君に会いたいが為に、今日も屋上に向かうのだ。



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