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「奏ー、今日の晩飯何ー?」

そう言いながらリビングに入ってくるのは奏と同居している恭介。
シャワーを浴びてきたのか、上半身裸で首にタオルをかけている姿はなんとも色っぽい。
奏より10pは背が高いであろう肉体だけでも恨めしいのに、均等につけられている筋肉。
奏は見せつけているのか、と思うもののついつい見惚れてしまう自分を自覚している。

「……シチューだけど」
「よっしゃあ! 俺、奏の作るシチュー大好き」
「……ッあ、あっそ」

表面では冷たく接しているけれど、奏は誰よりも恭介のことが大好きだ。
初めて付き合ったのも、初めてキスをしたのも……全部恭介が初めてだった。

自分の性癖に気付いたのは高校1年のとき。
周りに彼女ができる中、奏は初恋もまだだったし女性にときめくなんてことは一度もなかった。
それで自分は男が好きなんだと気づき、それから恋なんて一生しないんだろうな……いや、しちゃいけないんだと半ば諦めていた。

そんなとき出会ったのが恭介。
誰にでも平等に接するところや、男らしさのなかにあるふとした子供っぽい表情。
そんなところに惹かれていって、いつしか憧れから『好き』という気持ちに変わっていった。
だから恭介に告白されたときは自分の頬を痕が残るほど引っ張ったものだ。
なんとも単純でアホな考えだけれども。
だって特別外見が良いということもなければ、こんなに意地っ張りな性格なのに。
そんな自分を好きになってくれることが奏にとっては死ぬほど嬉しくて、その場で涙をポロポロと零してしまった。
今思い出せばそれもまた死ぬほど恥ずかしい思い出なんだけど。


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