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「……拓真」

後ろから凛とした涼しげな声で俺の名前が呼ばれた。振り向かなくたって誰が呼んだかなんてすぐわかる。

「玲! どうしたの?」

俺が後ろを振り返って聞くと、ニコッと微笑まれた。そこには頭から足の先まで完璧な人間がいた。
繊細な肌にすっと通った鼻筋、唇はピンクでぷっくりとしている。
どこをとっても完璧だ。
美形すぎてムカつくほど。
だって廊下を歩くだけでみんなの視線が玲に集まる。男からの熱っぽい視線もあれば、女子からの妬むような視線もある。
確かにこれだけ美人だったら女も嫉妬するよな。

そして俺は、その美人すぎる玲と付き合ってたりする。
何でどこにでもいるような平凡と付き合ってくれるのかがわからないが嬉しい。

「いや……ただ呼んだだけ」
「? そっか」

何だったんだろう。
まぁこういうのはよくあることなんだけど。
玲はいまいち何を考えてるかわからないときがある。そこがみんなを引き寄せるのかなぁ。

何てことを考えてるうちに校舎の一番奥まで来てた。もうすぐで授業はじまるし教室戻ろっと。
くるりとUターンして戻ろうとしたとき。
ある教室が目にとまった。

「……あ」

人なんて滅多にこない空き教室。
俺がここにいるのはおいとくとして、こんなところに用のある人なんていないに等しい。
でも俺はこの空き教室に思い入れがある。
だってここで玲と出会ったんだから。

そっか。
あの日から……俺達が付き合った日から、もう1年になるのかぁ。

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