▼ 06
「だったら言うことあるだろ?何て言えばいいんだっけ?」
「あ…」
濡れた瞳がこちらを見下ろしている。しかしこの場において立場が上なのは間違いなく俺で、見下ろされているのはこいつの方。九条もきっとそれを感じているはずだ。
その証拠に、奴は唇を動かしこう言った。
「おねがい、します…っ!」
駄目だ。違う。そうじゃない。
「それじゃ足りない。誰に何をどうして欲しいか、ちゃんと言葉にしろ」
もう限界なのだろう。九条は真っ赤な顔で吐息を漏らし、また新しい涙を零す。
「…っ、先生に、俺のチンコ、舐めて、触って…イかせて欲しい、です…!お願いします…おねが…っひ、う」
…上出来だ。にやりと唇の端がつり上がる。
「いい子だな、九条」
「あ、りがと、ございます…っ」
「嬉しいだろう?俺に褒められて」
「う、うれしい、です」
先程とは打って変わって従順だ。表情は甘く溶け、期待の色を浮かべている。
「いい子には、ちゃんとご褒美をやる」
「あぁっん!」
再びペニスを口内に招き入れ、最初からイかせることを目的に激しく奉仕した。
「ひぃぃっ、あ、あっ、きもちぃ、です…!せんせ、もっとっあぁぁっうそぉ…っ!?」
根元を縛り付けていた指を外すと、すぐに痙攣を始める九条の細い身体。
「あああぁっ、いくうっいく!出る!出ちゃうよせんせぇ…っ」
「ん」
「うぁぁぁぁ…ッ!!」
びゅっびゅっと勢い良く吐き出された白濁が、みるみるうちに口に溜まっていく。
…くそまずいじゃねぇか。ふざけんな。
「ぁ、あ…はぁ…んんっ!?」
余韻に浸る九条を引き寄せ、無理矢理口付けた。口の中の精液を全て流し込む。こんなまずいものなんかくれてやるわ。いらねえ。
「ん゛ーーーーっ!んっ!んん!」
目を見開いて抵抗する九条。しかし唇は離さない。こいつが全部飲み込むまで。
「んんっん、ん…っ」
ごくん、とその喉が波打つのを見届けてようやく解放した。余程苦しかったのか、肩で息をしている。
「どうだ、自分の精液の味は」
「さいっあく…うぇぇ…ふざけんなよ…」
「手前が出したものの尻拭いは手前がやれ」
俺がやる必要はない。
ごしごしとしかめ面で唇を拭っていた九条は、何かに気がついたようにこちらを見た。
「あのさ…先生って、その…」
「なに」
「ほ、ホモなのか?」
「殺すぞ」
んなわけねーだろ。
九条は慌てて次の言葉を紡ぐ。
「だって、フェラとかすっげーうまいし…男相手、慣れてんのかな、とか…」
「何で俺が好き好んで男のチンポ咥えなきゃなんねぇんだ。つまんない想像ばっかしてるとマジで殺すぞ」
「おっ、俺のは咥えたじゃん!」
「うるせえな。細かいことはいいんだよ」
「なんだそれ…」
「それより早く服着ろ。みっともない」
「あんたが脱げって言ったんだろ!?」
ぶつぶつと文句を言いながら着替える九条。
「…」
その様子をぼんやりと眺めながら、先程の光景を思い出す。
『せんせぇ…っ』
…騒がしいガキは嫌いだ。泣いてる子どもなんて鬱陶しくて構ってられない。
でも、こいつに先生と呼ばれるのは嫌いじゃない。
フェラをしたのも、口付けをしたのも、ほとんど衝動的だ。本当はそんなことする気はなかったのに。
「…クソが」
柄にもないその感情に、俺は小さく溜息を吐いた。
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