▼ 05
いやだ、だめ、と九条が喚くのが聞こえる。
それらを全て無視し、しつこく弄り倒してやるのが常だった。本気で嫌がっているわけではないこともわかっている。単に過ぎた快感をうまく受け止めきれないだけだろう。
俺だって別にフェラが好きなわけじゃない。自分にもついているものなのだ。愛撫してやっても、何か新しい感覚が得られるわけではない。
「ひ……ッあぁ、あっ、あ、あ……!!」
が、こうも素直に反応されると止めてやる気にはなれなかった。
「せんせぇっ、も、やだ、それ……っ、変になるから、普通のがいい」
「普通のってなんだよ。これだって普通だろ」
「チンコ咥えるのは普通じゃねぇ!!」
涙声で訴えかけてくる九条に、俺は声を出して笑った。
つまるところ、俺がこうして甲斐甲斐しく尽くしてやる理由は、こいつの反応によるところが最も大きい。
「これだけ濡らしといて、偉そうに言える台詞かよ」
「んんぁあ……ッ!!」
先端を咥えて強く吸うと、九条はびくんと身体を仰け反らせて射精する。口の中になんともいえないまずい液体が流れ込んできた。咄嗟にそれを一気に飲み干してしまう。
「……っ」
「わ、笑うな!!」
肩を震わせる俺に、九条は顔を真っ赤にしながら軽い蹴りを入れてきた。その足首を掴んで引き寄せてやれば、九条の身体はシーツの上を滑っていとも簡単に下がってくる。
「だってお前、嫌々言いながら結局人の口に出してんじゃねぇか」
「仕方ねーじゃん先生がうますぎるんだから!!」
「そりゃどうも」
嬉しくねぇ。
「んぐっ、やめ……」
未だ精液の味の残る口でキスをした。顔を背けようとするのを無理矢理押さえ、わざと舌を絡めてやる。
「まっず!!不味いわ!!ふざけんな!!」
「自分の出したもんだろ」
「だから嫌なんだよっ!よくそんなもん飲めるな!」
「お前のだからだろ」
「え」
馬鹿め。
「俺だって美味しかねーよ」
「あ……そ、そう……?」
こんなものを嬉々として飲む奴がいたら、そいつは間違いなく変態だ。俺は変態ではない。
「さて」
「……」
最早常備してあると言ってもいいローションのボトルを取り出すと、九条はこの次自分が何をされるのかを悟ったのか、無言で視線を逸らす。
「なんだよ。ちゃんと見ろよ」
「むり」
「もう慣れただろ」
「慣れない」
それどころかさらに枕を手繰り寄せ、そこに顔を埋めて完全に目の前の光景をシャットアウトしようとしていた。
「……」
……見えない方が余計怖くないか。口には出さず心の中でそう思う。
「別にお前がそれでいいならいいけど」
いつもならばローションなど冷たいままぶっかけてやるところだが、今日は手のひらの上でしっかりと人肌に温めてやった。これもまた、誕生日サービスだ。
「……っ」
まずは一本。十分に濡れた指を孔にあてがう。少し力を込めると、ほんの少しの抵抗を感じつつも指が中に沈み込んでいった。
「は……っ、ん……」
内側を傷つけないよう、丁寧に指の腹で押しながら抜き差しをする。くぷくぷとローションと空気の絡む音の中に、九条のくぐもった声が聞こえた。
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