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聡太郎が、学校を休んだ。
メールではただの風邪みたいなことを言っていたけれど、俺は心配で授業にも集中できない。
あぁ…聡太郎が体調を崩すなんて。熱で目が潤んで息も荒くて声だって掠れてて、「ひかるぅ…」って悩ましげな声で名前なんか呼ばれちゃったらそれはもう。
あ、やばい。想像したら勃つ。
学校終わったら速攻行こう。そしてあわよくばちゅっちゅしてずっこんばっこん…ん?
卑猥な想像に浸っていたとき、後ろから肩を叩かれた。振り返るとクラスの女子が立っている。…名前、何だっけ。思い出せない。
「あの、守山くん」
「なに?」
「今日の放課後…委員会あるんだけど、村上くんの代わりに来られないかな」
「あー…」
聡太郎は学級委員だ。でも俺、早く帰って聡太郎のとこ行きたいんだけど…。
うーん。うーん。俺が代わりに委員会に行けば、聡太郎は褒めてくれるかな。
「…」
脳内でシュミレーションをしてみる。
――ひかる、ありがとう。お前は本当に頼りになるしかっこいいし…好きだよ。俺のこと、抱いて?
「これだ」
「え?」
「うん、大丈夫。行くよ」
頭の中の聡太郎がかわいすぎてやばい。脳内でもかわいいってどうなのそれ。実物はもっとかわいいけど。
委員会なんてさっさと終わらせて、お見舞い行くからね!だからいっぱい褒めてね!待ってて俺のそーちゃん!
*
「わざわざごめんねぇ。聡太郎なら二階で寝てるから」
「いえ俺が好きで寄っただけなんで!聡太郎、具合どうですか?」
「大したことないのよ。ただの微熱」
「そっか…お邪魔してもいいっすか」
「もちろんよ。聡太郎も喜ぶと思うわ」
お邪魔します、と呟いて足を踏み入れた。
聡太郎のお母さんは聡太郎によく似ていて、小動物を思い起こさせるような雰囲気をしている。あ、違う。聡太郎がお母さんに似てるのか。
「じゃあ、俺聡太郎の部屋に行ってきます」
「はーい。ゆっくりしていってね」
微熱か。ひどくなさそうで良かったけど、心配なことには変わりない。トントンと軽い足取りで階段を上り、目的の部屋を開けた。
「聡太郎!」
俺だよ!ひかるだよ!聡太郎の大好きなひかるだよ!
「…っひかる?」
「大丈夫?熱は下がった?顔見せて」
あぁ、やっぱりかわいい。ベッドからびっくりしたような表情でこちらを見つめる聡太郎は、熱のせいか真っ赤な顔をしている。
「俺、今日聡太郎がいなくてめっちゃ寂しかった…」
「…昨日会っただろ」
「毎日24時間ずっとくっついていたいもん!」
ぺたり。おでこに掌をくっつけると、普段より高い温度が伝わってきた。
「あ、授業でもらったプリントとか持ってきたよ」
「ありがと」
「あとー、聡太郎の代わりに委員会行ってきた!」
「え…」
さぁ褒めて!俺を褒めて!ひかるは頼りになるなって言って!
しかし、聡太郎の反応は想像していたものと全く違った。
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