▼ 01
「はい、百瀬に決定ー」
「うう…」
ぺたりと机に突っ伏す僕。騒ぐ友人たち。
どうしていつもこんなときばかり貧乏くじを引かされるんだ。いや元からくじ運があるほうではないが。
ゼミの飲み会。悪酔いした他のメンバーが強引に始めたくじ引きで、僕は見事にその罰ゲームの対象に選ばれてしまったのである。
「じゃあ罰ゲームな!」
ごそごそと彼が取り出したものを見て、僕は目を丸くした。
「…や、やだ。他の罰ゲームにしようよ」
「負けた奴が何言ってんだ」
だって。だってだってだって。
…ナース服なんか、着たくない。
「男がこんなの着ても気持ち悪いだけだから。皆もそんなの見たくないでしょ?ね?やめよう?」
いかにもパーティー用のコスプレです、といった包装のそれ。きっと近くの雑貨屋ででも買ったんだろう。
「いやいや、これ2000円もしたんだぜ。無駄にするなよ」
そんなことにお金を使うんじゃない。もっと有意義なことに使いなさい。
どうして最近はこんなに災難ばかり降りかかってくるんだ。僕はただ平穏に過ごしたいだけなのに。
「まぁいいからいいから。ほら、トイレで着替えて来いよ」
女装なんて、大っ嫌いだ。
*
「う、んん…」
あれ、僕、どうしたんだっけ…?
ぼんやりとまだ正常に機能しない頭。霞んだ視界の中で昨晩の記憶を引きずり出そうとする。
確か、くじ引きで負けて女装しろって言われて。それからもう自棄になってお酒を馬鹿みたいに飲んだ気が…。
ずきずきと頭が痛む。身体もなんだかだるい。
っていうかここはどこ。ふかふかしてあったかくて、とても寝心地が良い。
段々と覚醒してきた僕は、とりあえず起き上がるために体勢を変えようとした。
「んっ」
…え?誰?隣に誰か眠っている。
「あ…、律くん、起きたのか」
おはよう、と爽やかに笑うその顔には見覚えがあった。
「りょ、亮一さんなんでここに…」
「なんでって、ここは俺の家だけど」
「いやそういうことを言ってるんじゃなくてですね!」
「あっ」
「えっ」
彼の口からなんだかいやらしい悲鳴が上がる。そして気が付いた。…僕のそれが、亮一さんのお尻の穴に、しっかりと挿入されているのを。
「なっ、なななななんで、えっ?え!?」
「ふふ」
いや笑ってる場合じゃないです。
「あぁぁぁ!?これ…!?」
自分の姿を確認してさらに叫び声をあげる。何故なら僕は、飲み会の罰ゲームで着せられたナース服を着たままだったからだ。
突っ込みどころが多すぎてもう処理しきれない。頭がパンクしそうだ。
prev / next