シック・ラバー | ナノ


▼ 03



はぁ。肩にかかる重みに溜息を吐く。無論その重みとは、俺にもたれかかる瑞貴の頭だ。疲れたからって寝るなよ。最初から最後まで子どものような奴。

ガタンゴトンと不規則に揺れる電車の中、ずり落ちそうになるその頭を軽く押さえた。時折他の乗客から視線を向けられたが、まぁそれはいい。

手を握ったりとか、こうして無防備に寝るとことか。こいつの当たり前の中に俺がいることが、こんなにも嬉しいから。他人の目なんか気にならないくらいには、今の俺は機嫌がいいらしい。

「…」

眠り続ける瑞貴の顔をじっと見つめる。超アホ面。口くらい閉じろよ。

「…楽しかった?」

返事はない。すうすうと小さな呼吸音が聞こえるだけ。

指に絡む柔らかな髪が、夕日に照らされてオレンジ色に光っていた。瑞貴は俺とは違ってくせっ毛だし、色も真っ黒ではなく少し茶色っぽい。

本当に…何もかもが違う。

そもそも俺は動物園なんて興味ないし、人混みも嫌いだし、休日は出かけるより家でのんびりしている方がずっと良い。

それでも今日、こんなに楽しかったと思えるのは。

…それは絶対、こいつが隣に居たからだ。

「瑞貴」
「ん…」

耳元で名前を呼べば、少しだけ身じろぎをする瑞貴。お前、ちゃんと覚えてるんだろうな。さっき俺のこと馬鹿にしたろ。

帰ったら嫌って言う程泣かしてやる。いや、鳴かす?啼かす?…どっちでもいいか。どうせやることは一緒だ。そのことを考えると自然と笑みが零れた。

「…ふ」

お前といると毎日飽きないよ。明日はどんな風に俺を笑わせてくれるの。なぁ瑞貴。

end?





おまけ

「ひ、ひふひ?」
「…」
「いひゃいんひゃへほ(訳:痛いんだけど)」
「チッ…」
「!?」
「笑えよ」
「へ」
「笑えっつってんの。こうやって口角上げてさ」
「いっ!いひゃい!ひゃへほはは!(訳:いっ!痛い!やめろばか!)」
「満面の笑みで俺にキスしろ」
「(こいつ…いつにも増してこじらせとる)」
「しなきゃ殺す」
「ひゃあははへほ!(訳:じゃあ離せよ!)」
「ほら早く」
「なんなんだよ本当…そんな急に言っても笑えるわけないやろ…あーいってぇ…」
「泣かすぞ」
「!?」
「鳴かすぞ」
「にっ、二回も言わなくていい!しかも漢字おかしくね!?分かったから!」
「早く」
「…こ、こう?」
「…」
「これで、キスすればいいんだろ?」
「…違う」
「は?」
「不細工。違う。俺が求めてるのはそんな顔じゃない」
「なっ…!」
「もういい」
「ちょ、冷たい!手!どけろ!」
「約束通り泣かす」
「意味わかんねぇぇぇぇ!」

いつにも増してこじらせてるひふみ。

end.

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