01.
お昼を共にしたあの日以来、私と檜佐木さんの距離は少しずつではあるものの、縮まってきたように思う。話してみればぽんぽんと会話が続き、二人しかいない執務室の空気も最初と比べ、随分と軽くなった。
「そろそろ休憩入れるか」
「じゃあ、お茶沸かしますね」
タイミングよくキリのいいところに差し掛かったので、筆をおき、給湯室に向かう。ちょっぴり高級な玉露を淹れて戻ると、テーブルには可愛らしい和菓子が置かれていた。
「わぁっ」
「こないだ狛村隊長にもらったんだ」
「食べるの勿体ないくらいですねー」
「食べなくてもいいんだぞ」
「えぇっ」
「冗談だ、冗談」
一カ月近くたった今では、軽くふざけあうようになった。檜佐木さんが何を考えているのか、少しではあるけれどなんとなくわかるようになって。ぎこちなかったころと比べれば仕事においての効率もぐんと上がったかのように思える。
「ああ、そうだ、今月分の瀞霊廷通信の原稿を取りに行ってくれないか」
「こないだ終わったばかりだと思ってたのに……」
「またしばらく忙しくなるぞ」
ゆるく笑う檜佐木さん。でも、隊長が不在のこの九番隊をまわすために毎日膨大な量の書類と戦っているのを私は知っている。そんな檜佐木さんのためにも、私でできることは最大限手伝わなければ。
「そしたら、ついでに他隊への書類も出してきますね」
「悪いな」
「いえいえ」
私でできることがあったら何でも言ってくださいね、というと、檜佐木さんは少し目を見開いた後ああ、と小さく笑った。